劇場公開日 2003年12月6日

「異文化を理解する努力を捧げたアメリカ映画の日本文化の称賛」ラスト サムライ Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0異文化を理解する努力を捧げたアメリカ映画の日本文化の称賛

2020年4月18日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

大好きな「レジェンド・オブ・フォール」のエドワード・ズウィック監督の新作。ネイティブアメリカンへの関心が、今回は日本人に向けられる。トム・クルーズは制作者として日本興行を目的にして主演したのだろうが、その作意が全く卑しくない。ズウィック監督の演出は、もし130年前に生きていればクルーズのように日本に渡り、侍と生活を共にしそのスピリットに共鳴したかったと切望する思いが全編に溢れていて、日本を舞台にしたアメリカ映画では珍しく日本の良さを映像に記録してくれている。勿論それはアメリカ人の西洋から見た日本の良さではあるが、今日本映画でこのように日本の良さ、日本人の良いところを描ける映画人がいるのかとなると、言葉が出ない。この映画は、クルーズとズウィックの勝利である。
渡辺謙はアメリカ映画界でこの演技を高く評価されているが、短期間で英語をマスターし台詞の英語を話しながらの演技を見事に熟している。言葉の壁が無ければアメリカ映画で活躍できる演技力のある俳優はもっといると思うが、役柄の壁が大きいのがネックとなっている。
CGを使った横浜港の遠景の美しさ。ラストの決戦に浮かび上がる、侍の終焉と時代の流れの変化による悲壮感。それでも尚侍として死す者に捧げる敬愛を表現できていることが、素晴らしい。映画制作、映画表現で出来る文化交流がここにある。細かいところの違和感があるものの、それを吹き飛ばす程の存在価値が、この作品にはある。稀に見る日本を舞台にしたアメリカ映画の秀作。
  2004年 1月10日

Gustav