「初心を貫く一人の武士の心根の美しさ」隠し剣 鬼の爪 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)
初心を貫く一人の武士の心根の美しさ
「たそがれ清兵衛」と兄弟みたいな映画のレビューに
背中を押されて観ました。
素晴らしい名作でした。
“たそがれ“と同じく東北の小さな藩・海坂藩、
主人公は下級武士、
時は、幕末、
大砲の訓練や、鉄砲隊が出てきます。
イギリス帰りの指南役もいて、西洋文明の影響が海坂藩にも
押し寄せてきます。
2本の柱となるストーリーは、
①殺陣の使い手の主人公が仲間を殺せと、藩命を受ける
その果し合いの様子と結果。
②身分違いの恋・・・その行方。
最初からお終いまで、込み上げる感情に、泣きそうでした。
主人公の片桐宗蔵(永瀬正敏)は、筋の通らぬことを許せない
一途な性格です。
幼くして女中奉公に来た“きえ“(松たか子)が妙齢になり商家へ嫁いだ。
酷い労働を強いられ病に臥せってると聞き、
余りの憔悴ぶりを見兼ねて、姑を振り切って、自宅に連れ帰る。
きえは滋養のある物を食べ医者にかかり、日に日に回復をする。
女中と旦那様の穏やかな日々は、上役の心無い言葉から、終わる。
宗蔵はきえを故郷に帰すのだった。
一刀流の師範・戸田寛斎(田中泯)の相弟子の狭間(小澤征悦)が、
江戸で謀反を企んだ罪で投獄された。
しかし狭間は牢を抜け出し農家に立て篭もり、娘と祖父を人質にしている。
そしてその狭間を殺す討手として片桐が指名される。
狭間の強さを知る片桐は師匠・戸田に“隠し剣 鷹の爪“の更に上を行く
「龍尾返し」の秘剣を伝授される。
一方で、狭間の妻(高島礼子)が片桐宅を訪れ
“狭間を逃して・・・“と懇願する。
片桐は“自分が逃しても、必ず狭間は殺される“と答える。
それを聞いて妻は、その足で家老(緒方拳)に出向き、
赦しを乞うと出ていく。
《決闘》
農家に行き“武士らしく切腹せよ“と説得に聞く耳を持たない狭間。
一度も人を斬ったことのない片桐と、江戸で何人も辻斬りをしたという狭間。
それでも秘伝の剣法で追い詰めた片桐。
とどめを刺す前に、
最後の説得を試みる、【その一瞬の隙】鉄砲隊が、撃った、
そして2度目も撃った。
その後、意外な決着があった。
狭間の妻をもて遊び、嘘の約束をした家老。
どうしても許せない片桐は、なんと家老を錐のような刃物で、
待ち伏せした老中で、心臓を一突きして意識不明の昏倒する家老。
その後、片桐は禄を返納して武士を辞める。
その胸中は“身分違い”で叶わなかった初恋。
“きえ“を迎えに行くのだった。
妻にと乞うと、きえは、
「それは旦那様のご命令ですか?」
「うん、命令だ」
「それであれば、仕方がありませんね」と
きえは答える。
松たか子の清潔なのに艶やかな魅力、
永瀬正敏の実直で飾らない芝居、
緒形拳の外連味たっぷりの芝居、
高島礼子の年増の色気、
田中泯の風格、
山田洋次監督の時代劇は燻銀の素晴らしさ。
そして藤沢周平の2話を、ハッピーエンドのカタルシスで
終わらせる手法。
傑作でした。
わーい、琥珀糖さんのお眼鏡にかなって、良かったですー。
エゾとエド、聞きまつがいますよね。
話それますが、今ゴールデンカムイと北海道へ行こう、的なキャンペーンやってますね。
あー行きたい、白老行きたい。行けないけど…。