回路のレビュー・感想・評価
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ガラスの瓶
黒澤清祭りである。
30年ほど前の作品を2本まとめて視聴。
当時衝撃を受けた「CURE」と合わせて視聴。
衝撃を受けた割にはあまり覚えてない。
タイトルの出方は好き。
しかし、パソコンの不気味な動画、影、隙間に貼られる赤いテープ、スピッた青年の回路は開かれたと言う言葉。これだけでよくここまで話を広げられたな〜と思う。
30年ほど前の作品なので機材関係はなかなかにエモい。
テレビのザッピングなんて今はないので少し入るだけでビビってしまう。
そして、さらっと軽犯罪を起こす登場人物達にも失笑してしまう。
登場人物の頭の回路もおかしいわ。
影の跡は原爆ドームで見たあれを思い出すし、人物や霊達の動き方もなんか嫌悪感がある。
ガムテも赤ってのが恐怖心を煽る良い材料だと思う。
後半、人っこ1人いないガランとした外の風景はなんとなくビデオ版の「呪怨」のラストやゾンビ物を彷彿とさせる。
淡々と流れるニュースの死亡者リスト。
いつまでも年齢性別関係なく流れ続けるそれを見てると、都市伝説の「テレビ終了後に明日の死亡者リストが流れる」ってのを連想した。
そもそも、感染していく面々に関係性があまりない。
いきなり死んでいくので何がトリガーなのかさっぱりわからない。
しかし個人的にはホラーなんてわけわかんなくても無問題でその分1箇所でも強いインパクトを残せばそれでOKだと思ってるのでこの作品はアリ。
ラストは船で逃避行。
これは沖縄の少年が海に手紙を入れたガラスの瓶が10年越しで返信が来た事をなぞっている。
もぅ、あんな死にかけの男をなんで連れていくのかわからなかったけど最後の最後まで一緒だった相手とは強い絆ができ助けるというホラー鉄板なんだなと思った。
そんな彼もサラッと消える。
あの小さいボートも船舶免許必要だっけ?
エンディングがこっこさんですか!!
ここでも改めて時代を感じた。
恐怖よりもエモ味の多い1本。
まあまあの映画
2001年公開、黒沢清監督作品。
この作品、第54回カンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞しています。
ホラー作品が海外の賞を受賞するなんてなかなか珍しい…と言うか、この監督さん、どちらかと言うと、海外での評価の方が高いですね。
まぁ、そんな事よりも、単純に面白ければ、それでいいんです…観る側としては(笑)
で…
なかなか難解な物語です(笑)
作品中、初っ端から「奇妙な事」が連続して起こり、それについては何の説明も無いため、我々観る側が色々と想像しなければいけません…もちろん「なぜ?」の説明も無く、作品は終了します…はっきり言って、こういう映画、苦手です(笑)
難解とは言っても、ヒントになる場面や台詞はいくつかありました。
タイトルの「回路」という言葉ですが、台詞の中に「この世とあの世を繋ぐ"回路"」「"回路"は開かれた」みたいな言葉が出て来たと思います。恐らく、それは例の「あかずの間」やPCがその役割をしているのではと思いました。得体の知れない(幽霊が存在するような)未知の世界を、未知の人たちと無限に繋がる事(=出会える事)が出来る様な来たるべきネット社会に例えているんだろうなという事は、容易に想像出来ました(恐らくこの映画が制作された2000年頃って、今みたいにSNSとかが成熟する前ですよね)。しかし、この作品は、ご気楽に未知の人(=幽霊)と"繋がれる"と言うよりも、向こうの世界がこちらの世界を侵食し始めるんだと、その不穏な状況を描いています。
そう考えると、この作品はホラーというよりも、もうSFに近いなと思いました。
確かに、暗闇の中を蠢く謎の黒い影や、突然消えたり現れたりする人影って、日本人がイメージする典型的な"幽霊"って感じで、その演出はなかなか怖かったんですが、テーマが分かってくると一気に冷めてしまったというのも正直なところです(笑)
ジャパニーズ・ホラーの代表作として扱われているようですが、私的には、ドラキュラとか貞子とかゾンビとか、"バカでも"分かりやすいホラー作品の方が性に合っているなと思いました(笑)
*終末論的なラストは、後年の作品『散歩する侵略者』にも通じる世界観かなと思いました。
*毎度思うのですが、国際舞台に出て行くような作品には、視覚効果とかもう少しお金を掛けて欲しい…安っぽい演出効果は、何だか観ているこちら側も恥ずかしい…笑
*VODにて鑑賞。100円ケチって、300円で観たら、ブロック・ノイズだらけでした(笑)
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自宅で鑑賞。都合、三回以上観ている。早撮りの黒沢作品群の中では出色の出来。小中千昭による恐怖の方程式「小中理論」を踏襲した作りで、好きなシーンが複数ある。不要なサプライズを仕掛けたショッキングホラーでは無く、じっくり魅せるのが佳い。冥界が溢れ、現世にはみ出して来る幽霊が生者をアチラへ送ると云う設定は破綻気味。プロットやストーリーを追い掛けるのではなく、不気味で不安を煽る描写や世界観に身を委ねると愉しめる。ただ確かに後半の展開はやや足早で単調な上、捨て鉢的……それでも好きな一作。85/100点。
・赤いテープで囲まれた地下室内で、赤いワンピースの女が躓き乍ら迫って来るシーンは、鶴田法男監督のオリジナルビデオ『ほんとにあった怖い話~第二夜('91)』収録の「第四話 夏の体育館」に殆ど同じシーンがある。これは鶴田監督の諒承を得て、本作内に採り込んだと黒沢監督がインタビューで答えている。
・監督が「小中理論」の実践者として、鶴田法男や高橋洋に大きな影響を受け、一時期追い掛けていたのは明白だが、それ以上に鶴田監督の描く幽霊やその表現に憧憬を抱き、進んで消化・吸収しようとしていた時期に本作が作られている。
・鑑賞日:2011年5月5日(木・こどもの日)
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