劇場公開日 2002年12月14日

K-19 : 映画評論・批評

2002年12月2日更新

2002年12月14日より日比谷スカラ座1ほか全国東宝洋画系にてロードショー

その鈍い軋みは鳴りやまないだろう

潜水艦映画の醍醐味は、音にある。迫る魚雷を固唾を飲んでやり過ごす沈黙の恐怖や、深く深く海中に潜行する艦体の軋みの不安……。狭く重苦しい艦内の閉塞は、それらの音によって増幅され、手に汗握る緊張とともに物語は進む。

ソ連原潜を舞台にしたこの映画でも、音はその中核にある。整備不完全なまま任務につかざるを得なかった乗組員たちの不安を象徴するかのように、艦内には不気味な軋みが始まる。だがこの任務を無事貫徹させねばならぬハリソン・フォード扮する艦長は、病的な無表情を浮かべつつ、いたずらに潜行を重ねていく。機械文明の終わりのようなその鈍い軋み。そして起こる原子炉事故。しかしその致命的な大事故からの生還が、そのままハッピーエンドとならないところがこの映画のポイントである。

「軋み」は上陸後も鳴り止まない。それはこの映画の時代設定でもある冷戦時代の軋みであり、そしてその後も続く国家と個人の闘争の軋みであるから。そしてそれは、常に「個人」としてあり続けながら「国家」に献身する副艦長、リーアム・ニーソンの抱える痛みの音でもある。この映画には「ハッピー」も「エンド」もなく、スクリーンのこちら側にもその鈍い軋みを響かせることになるだろう。

樋口泰人

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