「初めての「犬神家の一族」体験記」犬神家の一族 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
初めての「犬神家の一族」体験記
金田一耕助シリーズ(石坂浩二版)第6作。
通常スクリーンで鑑賞。
原作は鑑賞当時未読(※現在は既読)。
1976年の同名作品を市川崑監督がセルフリメイク。当時と同じ脚本を使用し、金田一耕助役を再び石坂浩二が務めたことで話題になりました。加藤武や大滝秀治がオリジナル版と同役で出演しており、今となっては嬉しいことこの上ない。
「今となっては」と言いますのも、本作が初めて触れた市川崑監督の金田一物で、初めて観た「犬神家の一族」だったからです。ちなみに初めて観た金田一物は稲垣吾郎主演の「八つ墓村」であり、私のミステリー好きの原体験になりました。
当時知っていた「犬神家の一族」の知識と云えば、白いマスクを被っている佐清や湖面から突き出している足くらい。もちろん犯人も知らないまっさらな頭で、今は無き奈良県庁近くの映画館「シネマデプト友楽」に祖父と観に行きました。
陰惨な連続殺人を解明するために奔走する名探偵・金田一耕助。天からの使者のように犬神家の人間関係にするりと入り込んで肉薄し、事件に秘められた情念を炙り出していく…
石坂浩二の飄々とした演技が、原作での金田一耕助のどこか掴みどころの無い人物像を見事に表現していて、「これが今に続く金田一像の原点なのか」ととても感慨深かったです。
それまで経験したことの無かった鮮やかなビジュアルの数々にショックを受けると同時に、陰惨極まる事件の裏に秘められた哀しい愛の物語の行方から目を離せなくなりました。
真相の切なさに強く胸が締めつけられると共に、これが「日本映画史上最高のミステリー」の称号の所以かと、当時中学1年生だった私は痛烈に実感させられたのでした。
その後オリジナル版を鑑賞し、本作より名作度が高いと思いました。フィルムの粒子の粗さが独特の味わいを与えて一層不気味さを演出していたし、横溝作品が持っている独特の雰囲気を損なわず、上手く表現されていると感じました。
市川監督のような巨匠でもリメイクはオリジナルに勝てないのか、と…。それでも挑戦のスピリットは尊敬に値する。
セルフリメイクが多い印象ですが、自ら築いた山を越えてさらに高みを目指そうとする職人気質に感服しました。
※修正(2024/03/13)