「チャン・イーモウ最初の方向転換」秋菊の物語 バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
チャン・イーモウ最初の方向転換
それまで『紅いコーリャン』『菊豆(チュイトウ)』『紅夢』と1920~30年代を舞台に鮮烈な色彩を基調とした表現主義的な映画を撮ってきたチャン・イーモウ監督が、現代のド田舎を舞台としてコン・リー、レイ・ラオション、コー・チーチュン、リウ・ペイチーの4人以外は地元の素人に演じさせるというネオ・レアリズモ的な手法で撮った映画。チャン・イーモウは当初はコメディとして撮ろうと考えていたそうだが、スタッフの反対が強かったため風刺的な要素を含んだヒューマンドラマ映画として作ったとのこと。
僕は公開当時、それまでのチャン・イーモウの表現主義的な作品にすっかりイカれていたので、全く作風の異なるこの映画には正直かなり戸惑った。今になってみるとチャン・イーモウは、ずっと作風の変わらないホウ・シャオシェンやウォン・カーウァイとは違って、何度も作風を大胆に変化させていく監督だったんだが、最初の上記3作に魅せられていた僕としてはやはりこの映画には今ひとつ没入できなかった。
ただ、前作『紅夢』とは180°異なるような役を見事に演じていた主演のコン・リーには改めて魅了された。この映画でベネチア国際映画祭の主演女優賞を20代の若さで受賞した彼女は、紛れもなくこの頃の中国映画を代表する女優だったと言える。この頃の中国の国際的女優と言えば彼女一択だったのだ。
コメントする
