「イライラして、そして面白い」秋菊の物語 Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
イライラして、そして面白い
「ベネチア金獅子賞、主演女優賞」も、納得の面白さであった。
裁定に納得のいかない主人公・秋菊が、次から次へと上訴を繰り返すので、どんどん行政単位が大きくなっていくのが面白い。
村、郡、県、市、そしてついに北京へ。北京では、さらに控訴・・・。
1992年制作とのことだが、当時の中国の景色や風俗が活写されているのも、また興味深い。
舗装路のない寒村から出発して、ビルが建ち並ぶ交通量の多い都会まで。
農村の祝いの行事から、シュワルツネッガーのポスターまで。
人々の服装も替わっていくし、物価もどんどん上がっていく。
インターネットの無い時代、地方から出てきた田舎者は、右も左も分からず、こんな感じだったのかもしれない。
ストーリーも良くできている。
話は堂々巡りで、対立する秋菊と村長の双方に、イライラさせられる。
しかし、ラストでは急展開を見せ、意外な結末に驚かされる。
ただ、実際の役人はもっと冷淡で、悪質な人間も多いはずだ。リアリティには欠けるが、そこが本作品の面白さでもある。
ストーリー、行政システム、時代を感じさせる風俗、そして様々な風景。
美貌のコン・リーが、田舎者の妊婦を演じ切っているという、コントラスト。
中国では女性が強いのか、秋菊は周囲の人間から「困った奴だ」とあきれられながらも、「女のくせに」と言って差別・抑圧されないのも、興味深い。
いろんな意味で面白い。決して、話の筋だけが見どころではない。
一粒で、何度もおいしい映画である。
<中国映画の展開(@国立映画アーカイブ)にて鑑賞>
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