フラガールのレビュー・感想・評価
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懐かしい常磐ハワイアンセンター
これが実話であるだけに、頑張れば夢が叶うということを実感しました。フラダンスって手話なんですね。
常磐ハワイアンセンターの誕生秘話というと一見地味な話に見えます。
けれどもこの作品では、産業構造の転換によって追い込まれる炭坑町の町おこしと戦前からの古い価値観に束縛された女性の自立というテーマを見いだして、2時間のドラマを成立させました。
また本作が実話に基づいていて、著名な観光施設の物語であることと、主人公の平山まどかはまだ健在で地元でフラダンスを教えていることも、物語に現実感を感じさせる一因になっていると思います。
本作が2年前の映画賞を総ナメにした名作になった原動力は、なんと言っても出演者の本気度ですね。完璧な方便使い、3カ月にわたる猛特訓を重ねた、その成果が画面に結実していると思います。その真剣さは台詞回しでも激しい感情の応酬となり、すごく生き生きとした作品に仕上がっていると感じました。
それにしても、盆踊りしか知らない炭鉱娘にフラダンスを教えるとはなんと無謀なんでしょう。東京からダンス教師のまどかを呼んできたものの元花形ダンサーで気位の高いその女性は、最初は炭鉱や素人の炭鉱娘たちを馬鹿するばかり。練習を開始しても、感心ほどのダメダメぶり。なんでプロを呼ばないのよと岸辺一徳演じる担当の吉本に食ってかかったときの「田舎を馬鹿にするな!」という地元訛り丸出しの激しい抗弁がすごかったです。(まるで意味不明のレベル)
当初は渋々ダンスを教えていたまどかであったけれど、次第に生徒たちのひたむきな情熱に打たれて、本気で教え込むようになります。都落ちして人間不信にもなりかけていたまどかが生徒と一体になっていく様がすごくよかったです。
特に、フラダンスに反対する父親に生徒の一人が連れて行こうとした時、銭湯の男湯にまで乱入して、全裸の父親ととっくみ合いするところは迫力ありました。
また転居で生徒の一人と別れるとき見せるシャイな態度も、気持ちがこもっていましたね。
またこの作品にも富司純子がリーダー紀美子の母親役に出演しています。富司が出ていると作品が締まりますね。今回も強行に娘がフラダンスで踊ることを反対していたのです。偶然紀美子が真剣に練習しているところを無言で見つめているシーンが印象的でした。言葉に出さなくともわかり合えるって素敵ですね。そのあと炭坑閉山とハワイアンセンターに反対する労組員に向けて啖呵を切るところもすごく感動的でした。
本作でフラダンスは手話を兼ねていることを知りました。踊りで気持ちを伝えるという前振りは、終盤でとても感動的なメッセージを伝えてくれます。これを知ったなら皆さんもフラダンスって素敵!って思えるようになるでしょう。
随所にクグッと来るいい話を織り込んで、ラストのフラダンスに持って行きます。あのダメダメだったガールズがこんな立派なショーをこなしているなんて奇跡としか思えません。しかしこれは実話です。30年前に本当に田舎の炭坑町の少女たちがやり遂げた事実なんだと思うと、可能性を信じ、頑張れば夢が叶うということを実感しました。
追伸
その後、すっかりフラダンスのご意見番となった出演者のひとり、南海キャンディーズ・しずちゃんは、芸能界フラダンス部を結成。番組の企画で榊原郁恵、ユンソナらを従え、スパリゾート・ハワイアンズの舞台に立ったそうです。一番踊れなさそうな人だったですがねぇ。
蒼井優のダンスが最高潮
主人公・紀美子(蒼井優)は、閉塞した炭鉱町の中で自らの夢を求めて、
またある娘は、解雇された父親の代わりに家族を支えるため、
それぞれの理由でフラダンサーに応募します。
フラダンスなど裸踊りと思われていた当時、娘たちは決死の思いでした。
紀美子の母親(富士純子)も、「働く」ということは汗水垂らし泥まみれになって、石炭を掘ることだと考えており、人前でヘラヘラしながら腰を振ることを「仕事」とは認めません。
石炭を守ろうとする者も、新しい時代に挑戦しようとする者も、どちらも真剣であり必死です。
両者の激しいぶつかり合いのシーンは見ごたえがあります。
時代や土地の価値観は、住む人間の生き方を否応なく締めつけますが、夢と情熱をもって、自分や周囲を変えていく人の姿が感銘を招きます。
紀美子の母親も、少しずつ娘の踊りを理解していきます。
フラダンスの美しい手の動きには、手話のようにひとつずつ意味があるそうです。
山場のエピソードでは、これが巧みに活かされ涙を誘いました。
クライマックスは勿論、ハワイアンセンター・オープンの日、フラダンスの公演の舞台です。
人間ドラマ,音楽が相まって盛り上がり、カットバックやスローモーションも挿入して、見事な演出でした。
主人公・紀美子のソロダンスのシーン、映画は最高潮に達します。
主演・蒼井優が見せるダンスの上達は、素晴らしいの一言につきます。
蒼井優の熱演が、この映画の出来ばえを2倍,3倍に仕立て上げました。
この年の屈指の一作でしょう。
どんな作品かとみてみたら・・
一人でも多くの人に届けたい珠玉の1本
のっけから偉そうなことを言ってしまうが、いやぁ、蒼井優はいい女優になった。「リリイ・シュシュのすべて」の頃は、のっぺりとした印象で、正直、どこがいいのか分からなかったが、本作では主演の松雪泰子を食うほどの熱演と可憐さを見せ、見事に映画を背負っている(助演では富司純子が最高!)。
作品自体の話に戻ると「フラガール」には、イイ映画だけが持つ心地よいリズムと“イイ匂い”がある。観客を飽きさせることなく、いくつもの起伏を作って進むストーリーは見事だし、昨今流行りがちな安易であざとい泣きの演出を排除しているのにも好感が持てる。ともかく心の底から泣き、涙した後に笑える傑作だ。もし、劇場で見逃した人には、ぜひDVDを急いで借りに行ってほしい。
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