「解り辛くて既視感もある作品」ハウルの動く城 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)
解り辛くて既視感もある作品
総合:60点
ストーリー: 40
キャスト: 65
演出: 70
ビジュアル: 80
音楽: 80
物語も設定も理解し辛い。そこがどういう世界で誰がどういう状況で何がどうなっているのか、まず最初の設定が説明不足だろう。ハウルが誰で何故移動できる城を持っていて何をしているのかもわからない。そして物語も同様で、ソフィーが老婆になる理由もハウルと生活出来る理由も彼らを取り巻く環境や展開も、何か必然性を感じない。
それがはっきりしないままにハウルとソフィーの物語が動き戦争が始まったところで、見ているほうとしては訳もわからず取り残された気分になる。ソフィーの年齢は劇中でころころ変わるし、戦争は原因もわからぬままに始まっておおいに戦って殺し合いをした後で、実は王宮に住んでいる魔法使いサリマンの一言だけであっけなく終わることが出来るくらい単純なものみたいだし、いったいどうなっているのだろうか。
ハウル役の木村拓哉の声は時々抑揚がなくてうまいとは思わないがそんなにひどくもない。ソフィー役の倍賞千恵子が悪いとは言わないが、少女から老婆まで年齢が変わって姿が全く違うものになっても声が変わらないというのは大きな違和感があって、これは年齢別に声優を用意しなかった製作者側の失態。
映像と音楽は頑張っていたけれど、場面場面で昔のジブリ作品、とくに「ナウシカ」「ラピュタ」「もののけ姫」を思わせる部分があって新鮮味がない。虫のように襲ってくる敵、光を出して方向を示す首飾りに羽ばたいて空を飛ぶ乗り物、どろどろの半液体の生物、どこかで見たような場面が劇中で繰り返されて、宮崎駿の才能の行き詰まりを作品から感じてしまう。
見た目も能力も製作者の想像した思う通りに自由自在に変更できるはずのアニメなのに、この既視感は何なのだろう。過去の作品群が素晴らしかったために、どうしても彼には非常に高い期待を持って見てしまうから余計にそうなんだろうが、見ている途中で既に多少の失望感を持ってしまうことを止められない。映像と音楽が良くても、総合として良い作品だと納得できるものではなかった。