「呪いを解いたその先に」ハウルの動く城 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
呪いを解いたその先に
"金曜ロードショー" で3回目の鑑賞。
原作は未読。
正直な話、本作があまり好きではなかった。物語のテーマが理解出来なかったからだ。ソフィーがおばあさんから唐突に元の姿に戻ったり、かと思えばまたおばあさんになったり、他にも様々な物事の意味が理解出来なくて、「全然面白くなーい」と云う感想になってしまったのだった。
「風の谷のナウシカ」や「紅の豚」などの幼少期から親しんで来た作品は好んで何回も観ており、ストーリーを記憶しているが、本作は今回の放送が中学生以来の鑑賞となり、殆ど何も覚えていない状態だった。返って、それが良かったのかもしれない。当時は理解出来なかったことがすんなりと頭に入って来たからだ。少しは成長出来ているってことなのか。
ハウルの城には呪いのかかった者たちが集まっている。そんな彼ら彼女らが呪縛から解放され、新たな生き方を見出すまでの物語がファンタジックに描かれていて感動した。
ソフィーが一時的に少女の姿に戻ったのは、ハウルへの愛がその時の彼女を突き動かしていたからかもしれないと感じた。
これまでは、私が実家の帽子屋を継がなければいけない、と云う責任感が彼女の身も心も縛りつけてしまっていた。
ハウルと出会い、彼を心から愛するようになったことで、自分ではない誰かのためになりたいと云う想いが芽生えた。
ふとすると再びおばあさんの姿になってしまったのは、まだ自分に絶対的な自信を持てなかったからではないだろうか。
自らを臆病者と云う呪いで縛り上げ、ゴテゴテといかめしい動く城をつくり、逃げ回っているハウルを救おうと、懸命に奔走したソフィーは、カッコいいしかわいい。
ジブリのヒロイン、とりわけ宮崎駿監督作品に登場するヒロインは愛の力でどんな困難も跳ね返していくのが魅力的だが、本作のソフィーもまたしかりだ。自らにかけていた呪縛を打ち破り、ひとりの成熟した女性へと見事に成長したのだった。
冒頭では大人しい雰囲気の地味な少女だったが、「ハウル大好き!」と人前で抱きつき、皆に慈愛のキスをするような人格へと変貌を遂げたのである。「家族」の呪いを解いて、めでたしめでたし。恋はその人の生き方を変え、その周囲の世界を変えてしまう力を持っているのかもしれない。
人は知らず知らずの内に、自らに呪いをかけてしまっているもの。自分はこんな人間だと決めつけ、その場から踏み出すことに臆病になり、現状維持を掲げて自己肯定しようとする。
果たしてそれでいいのだろうか。そこから解き放たれた時、新しい道が自ずと拓ける。そんな希望を感じさせるメッセージが籠められた本作を、めちゃくちゃ好きになった。
[以降の鑑賞記録]
2023/01/06:金曜ロードショー
2025/01/10:金曜ロードショー
※修正(2025/01/10)
セロファンさん。
コメントありがとうございます。
今回の放送で大好きになりました。年齢を経ると映画の見方も変わって来るのかもしれないなと、実感しました。今の自分に満足しないで日々精進したいものです。
私も昔一度観たきりなのですが、馴染みにくいなという印象でした。でもこのレビューを読むと、なるほど確かに!と思えてきます。現状を受け止める事も大事ですが、そこに偏りすぎてしまうと、自分の可能性を狭めてしまいそう。ソフィーのように新たな一歩を踏み出すって素敵ですね。レビューは書いてませんが大変共感しましたのでコメントさせていただきました。