劇場公開日 2005年12月17日

「愛する人を守りたい男がいた。思いをよせる男に死んでほしくないとすがる女がいた。そして不沈艦の映画を観て泣き崩れるkossyがいた。」男たちの大和 YAMATO kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0愛する人を守りたい男がいた。思いをよせる男に死んでほしくないとすがる女がいた。そして不沈艦の映画を観て泣き崩れるkossyがいた。

2019年8月15日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会、映画館

 こんな不謹慎な記事を書くkossyに不信感を抱く読者も・・・

 「北緯三十度四三分、東経一二八度四分へ行きたいのです」と船頭を探す内田真貴子。偶然彼女を乗せた漁師神尾は、彼女が内田二等兵の娘であると気づく。こうして映画『男たちの大和』は『タイタニック』のような構成で展開する。登場人物がかなり多いが、中心となるのは海軍特別年少兵・神尾(松山ケンイチ)の視点。海軍に憧れ、純粋に日本を守りたい一心で15歳の若さで志願するのだった・・・

 この映画は不思議なことに右からも左からも色々とケチをつけられ、賛否両論になりそうな予感もする。また、アジア諸国からは「軍国主義復活」だとか「戦争美化」「日本人だけが被害者」「侵略の事実を隠蔽」などといった非難を浴びる可能性だってあるのです。だけど、この映画のとらえ方は人それぞれ。一貫して訴えているのは「戦争の悲惨さ」であることは疑いの余地もないのですが、「日本を守って死んでいった人たちを・・・」というエンドロール後のテロップに違和感が残ります。

 佐藤純彌監督作品を劇場で初めて観たのは『人間の証明』。『新幹線大爆破』や『野性の証明』は大好きです。アドレナリンを大量放出させるような、ある種のハチャメチャぶりが非常に面白い。そのハチャメチャさが極度に現れ、大駄作になってしまったのが『北京原人 Who are you?』だ。北京原人で監督生命を絶たれたかと危惧されたが、旧友角川春樹に誘われて再起をかけたのだろうと想像できます。監督デビュー作が『陸軍残酷物語』で軍部批判の色が濃いものだったらしいし(未見)、『野性の証明』では自衛隊批判を暗に訴えてるし、『未完の対局』でも日本軍の恥部を描いていた。そうした作品群からすると、今作で戦争美化なんてするはずがない人なのです。ただ、日本の現代の風潮や東映の方針(特に宣伝)によって、色んな解釈ができる映画となったような気がします。

 ストーリーは、大和の乗組員の悲運とその家族の切なる願いを対照的に描き、反戦メッセージのみならず、「生きることの尊さ」をも訴え、生き残った者が背負った「生きることの意味」という重い命題を真摯に描いています。そして、沈没に至る最後の決戦では、残虐なまでに血飛沫が舞い、重厚な効果音によって臨場感たっぷりに戦争の恐怖を味わうことができました。もちろん泣いてしまいました。白石加代子、余貴美子、蒼井優の3人にやられました。こうなったら、蒼井優のために生きてゆきます・・・

 尚、今回の試写会は舞台挨拶付き!佐藤監督、山田純大、松山ケンイチ、渡辺大の4人。素敵なメッセージ、ありがとうございました。

〈2005年12月試写会にて〉

kossy