「つらいな~」初恋(2006) あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)
つらいな~
宮崎あおい主演で、題材が「3億円事件」の実話をベースにしたフィクションということで観ました。とは言っても、モチーフがこの有名な事件だけで、ストーリーはまったくの想像です。
時は60年代後半。場所は東京。若者はフランスの文学に啓蒙され、社会を「革命」しようとする精神が謳歌していました。これがいわゆる学生運動に繋がります。そんな時代に、とあるジャズバーにたむろする反体制的な若者の一人に初恋をする女子高生のお話仕立てになっています。
これが単なる「体制VS反体制」という構図で物語が進行していたら、わたくしは間違いなく一撃で寝ていたと思います。が、本作は、少女の淡い初恋の抒情物語を入れ、ある意味、これは面白かったです。そして、その少女が事件の犯人になる発想も、すこしじっくり考えればなんとなく伝わるものはあるし、それはそれで面白い。
ですが、それでもわたくしはこの映画に非常に退屈してしまいました。それは、やはり本作の抑制されたタッチにあるのだと思います。タッチを抑制すること自体は悪いとは思いわないし、どちらかというと好感が持てますが、こうした監督さんの意図が伝わらないのです。
この時代を反映したかったのでしょうか?
それとも宮崎あおいの恋心をコントラストで浮かびあがらせたかったのでしょうか?
その意図がそうであれ、それ以外であれ、ごめんなさい。わたくしの想像力では、何も心に伝わりませんでした。結果、監督さんのアート性を出したいがための自己陶酔に完結しているようにしか思えませんでした。
その時代、その時代を尊敬したい気持ちはわたくしにはありますが、だからといってそれを描いた作品をつくった作り手の心情にまでは、こちらから歩みよるつもりはないのです。
表現って伝えてなんぼだと思いますし。