「三億円事件と初恋」初恋(2006) kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
三億円事件と初恋
実際の兄妹である宮崎あおいと宮崎将。映画でも兄と妹である。まさかこの2人の間に・・・などと下衆の勘繰りを働かせてはいけないのです。高校生みすず(あおい)が好きになったのはランボーの詩を愛する東大生。他の仲間たちは学生運動の最中に、ちょっと距離をおいてジャズ喫茶Bでたむろする、夢はあるが血気盛んでどことなく空虚な若者たち。「喪失感には時効がない」。そんなみすずの言葉に代表されるかのような群像劇にも思え、そんな空気の中でなんとなく権力に逆らいたい気持ちが三億円事件を計画するのかと、最初は想像してみた。
みすずは親に見捨てられた薄幸の少女であったため、孤独から抜け出そうともがいていたのでしょう。東大生岸を全面的に信じ、幼き恋心とともに世の中を変えると主張する彼についていったのも当然の成り行き。単車が好きになり、車の運転も得意になり、強奪計画によって何かが変わると信じるようになったのです。だけど幸せは束の間。変えようとする力が大きければ大きいほど、喪失感も増大する・・・
最初は暗い性格であったこともあって、宮崎あおいも抑え目の演技でしたけど、バイクのシーンや詩集を読むシーンでは他の若手女優には真似できないものがありました。そして小嶺麗奈の大胆ヌードには驚いてしまった(初めて?)。星野真理も脱いだことだし、負けちゃられないと思ったのでしょうか・・・チラリと出演していた鰐淵晴子が彼女の行く末を暗示していたのかもしれません(意味不明です)。
それにしても、時代考証や当時の車など、またロケ地も60年代を見事に描いていたのにはびっくりです。あのおひょいさんが経営する柏田自転車店は本物だろうか、実はタイムスリップして撮影したんじゃないかと思えるほど。美術にはかなりのこだわりがあったようです。反面、ちょっと惜しいのは脚本だったかもしれません。冒頭から「ナンパしてきたよ」などと言ってたけど、当時にそんな言葉はあったのだろうか・・・