半落ちのレビュー・感想・評価
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警察内部の歪みと検察と警察の軋轢は興味深い
主演の寺尾聰さんは、いつもの如しで可もなく不可もなし。
前半は、刑事役の柴田恭兵さんが展開を引っ張ります。
後半からは、記者役の鶴田真由さん、國村隼さん、伊原剛志さん、吉岡秀隆さんの集団劇っぽくなる。
被害者役の原田美枝子さんがとても良いです。
他にも、西田敏行さん、樹木希林さん、高島礼子さんと脇を固めるキャストは豪華。笹野高史さんも最終盤にちょい役で登場。
トドメとしては、まだ22歳くらいの可愛い高橋一生さんがほぼセリフ無しのキーパーソンとして出てきたのは微笑ましかったです。
前半の警察内部の歪みと検察と警察の軋轢については、中々興味深いです。劇画「ゴルゴ13」の作中にも何度か登場しているグリーニッケ橋の比喩も良いですね。
後半のミステリーの謎解きは、それほど面白いとは思えず。
吉岡さんが演じた裁判官の「被害者への看護を尽くしたか」という観点が、作中の判決の量刑判断の基になるのでしょう。
物語としては、それを個人的な視点の基軸として理解しました。
総じて、豪華キャストに相応しい名作とは、ちょっと言い難いと思いました。
苦渋の選択・・
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ある女性が考察された。その夫で刑事の寺尾聴が自首してくる。
本人は罪を認めるものの、動機を話さない、いわゆる「半落ち」になる。
また、自首してくるまでに空白の1日があり、この間の足取りがつかめない。
結局、妻は痴呆症にかかっており、正気に戻るたびに殺してくれと言っていた。
寺尾聴は苦渋の決断をし、殺したのだった。
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切ない話。劇場で5年以上前に見たのだが、内容は比較的鮮明に覚えている。
妻を殺すのと殺さないのと、どちらが真の愛情なのだろうか。
正解は出ないが、人を殺すのは悪い事、といった常識では測れない。
寺尾聴はこのような葛藤する役がピタリとハマる。
タイトルなし
容疑者の来ているシャツがパリッとしている、記者が入り込みすぎ等、リアリティーがない部分がマイナスだが、どの役者も適材適所で豪華。ストーリーも骨髄バンクの年齢が切れたら51で死のうとしてたというのが若干?の部分があったが、概ね○裁判官の吉岡秀隆は自分の父もアルツハイマー故に、殺人に対して、刑を重くしたのだろうか。音楽も寂しげでいいが、見終わりはなぜか温かい。
守るための行動に、些かの違和感。
レンタルDVDで2回目の鑑賞。
原作は未読です。
7年前に亡くなった祖父がアルツハイマー病だったので、観ながら当時を思い出して、こみ上げるものがありました。
人が壊れる様を見せつけられ苦しい想いをしました。姿形は祖父なのに別人みたいで、急激な変化故に悲しかったです。
梶(寺尾聰)や妻の姉(樹木希林)の葛藤と苦悩が痛いほど理解出来ました。変わりゆく家族を前に、持って行き場の無い苦しみと、何もしてやれないもどかしさを噛み締める日々…
妻(原田美枝子)を殺害した後の2日間、梶はどこで何をしていたのか。刑事、検察官、弁護士、新聞記者の視点を交互に描きながら、慟哭の真実が浮き彫りになりました。
しかし、自分がドナーになった少年に迷惑が掛かることを恐れての行動となっていましたが、些か無理矢理。つまり、歌舞伎町でもらったティッシュは即座に捨るべきでした。
[追記(2020/03/31)]
佐々部清監督がお亡くなりになりました。
ご冥福を心よりお祈りします。
※修正(2023/08/25)
魂はいつ死ぬのか。
大学で生命倫理の勉強をしたが、魂はいつ死ぬのかは体死んでからか脳が死んでからかとても曖昧なところだ。
もし脳が死んでいたら死考えるなら、アルツハイマーは末期かもしれない。
いくら生きていたって苦しむくらいなら殺してあげた方が愛がある
彼が殺したの愛ではなくあくまでも、アルツハイマーなんである。
タイトルなし(ネタバレ)
一級品の役者が演じるとこうなるのか。というのが正直な感想。
原作読んで、クライマックスで拍子抜けした印象がある。
が、こちらはその理由に至る過程が、役者たちの演技でとてもよかった。
いくつか原作とは違う展開にしているところもあり、それが映画としてよかった理由でしょうか。
寺尾聰の表情で表現しているところは、さすがといえる。
ただ、51歳で死のうとしている理由がわかりにくい。
原作ではそこに焦点あったが、こちらは二日間を話さなかった理由がメインだった。
そして最後の吉岡秀隆との対峙は、命というものの難しさがあった。
魂はほんとに壊れているのか?吉岡秀隆の家族の穏やかな日常で考えさせられる。
梶の優しさが伝わってきた
優秀な警察官として知られていた梶が、アルツハイマー病を患っていた妻に「殺してくれ」と懇願され、ついに手をかけてしまったと警察署に自首してくる。
罪を認めて全てを自白する「全落ち」と思われたが、妻を殺してから自首するまでの2日間について梶が語ろうとしないため、事件の全貌が明らかにならない。
警察はとりあえず「死に場所を探して彷徨っていた」ということにして調書を作りマスコミに発表するが、マスコミは納得せず、世間の注目はこの「空白の2日間」に集中する。
梶はそれでもなお口を閉ざし、裁判が始まっても頑なに黙秘を続ける。
「空白の2日間」に一体何が起こったのか。
なぜ梶は何も語らないのか。
◆「空白の2日間」の謎
夫妻は数年前に、一人息子を白血病で亡くしていた。
発病の際に夫妻揃って骨髄移植のドナー登録をするが、息子に適合するドナーは現れず、亡くなってしまう。
しかし死の翌年、梶の骨髄に適合した患者が現れて、手術は成功。
相手に会うことは許されないが、打ちひしがれていた夫妻は息子が戻ってきたように感じ、寛喜する。
その矢先、妻のアルツハイマー病が発症。
少しずつ自分が壊れていくことを恐れて苦しむ妻と、愛する彼女が不憫で仕方ない梶。
ある日、妻は新聞記事で、梶から骨髄移植を受けた相手と思しき人物の投書を見つける。
14歳で手術を受け、今は新宿の小さなラーメン屋で働いているという少年の、梶への感謝の手紙だった。
妻はその投書を見て興奮し、同時に逡巡する。
会いに行ってはいけない、でも会いたい。
息子を失い、自分もアルツハイマーで先は長くない。
ドナー移植を受けられる年齢制限は50歳。
51歳になったらすぐ、夫は私たちの後を追って自殺するだろう。
なんとしてもそれを阻止したい。
投書のヒントを頼りに妻は何度も新宿に行き少年を探すが、見つけられないまま病状が悪化し、ついに事件が起こる。
妻を殺めた後に自分も死のうとした梶は、妻の日記を見つけた。
そこには、新聞の投書の切り抜きが貼ってあった。
梶は堪えきれず少年に会いに行っていた。
しかし、それを証言すれば、殺人という罪を犯した自分の骨髄を、少年が移植したということが世間に知られてしまう。
少年の身を守るため、梶は「空白の2日間」について絶対に語ろうとしなかったのだった。
愛する人が苦しみ続けている姿を目の当たりにして、どんな行動を取るべきなのか。
大切な人を守るために、自分には何ができるのか。
絶望的な状況の中で梶が下した決断と、どんなに周りから揺さぶられてもそれを貫き通す彼の意志の強さや優しさが沁みる作品でした。
◆感想
文章にしたらすっきりした!
こういう映画って、自分の感想うんぬんより、内容を正確に理解して、布石を回収し尽くすことを重視して観た方が面白い気がする。
観終わってすぐは頭の中がまだちょっと混乱していたけど、こうやって一つ一つ書いてみてやっと、
「そうか、梶は少年の身を守りたくて黙秘していたのか」
と理解できた。
最後少年にも会えたし、きっと自殺はしないだろうし、良かったなー。
・・・だけど、同時進行で進んでいた少女連続暴行事件のくだりは梶事件と何か関係あったんだっけ?(結局回収し尽くせてない
それは、私自身を決して忘れたくないから
映画「半落ち」(佐々部清監督)から。
この作品、横山秀夫さん原作・寺尾聰さん主演で話題になったが、
私は、原田美枝子さん演ずる妻が、ある新聞投稿を読み
日記を書きはじめるシーンが印象に残った。
原作とは違った台詞が、私のアンテナに引っかかったのである。
「今日から私は日記を書きます」に続き、綴られたフレーズで、
どうして書き始めたか・・を丁寧な字で書いてある。
「それは、私自身を決して忘れたくないから」と。
メモしたのは、私も同じことを思っていたからだ。
この「気になる一言」も、毎日続けなくても誰も怒らないし、
たとえ途切れたとしても、誰も気にならないかもしれない。
さらにこのところ、仕事が多いのか、私の仕事が遅いのか、
嫌ってほど残業が続くのに、なぜか書かずにいられない。
どうして寝る時間を惜しんでまで・・と訊ねられたら、
たぶん、冒頭のフレーズを思い出すと思ったからである。
この1年間、今まで仕事をしてきた二十数年間の中でも、
1番忙しかった1年だったかもしれない。
だからこそ、こんな経験は次の人にはさせてはいけないと感ずる。
どんなに忙しくったって、自分の時間を作って書き続ける楽しみ。
これだけは守り続けようとする私は、たぶん誰よりも
自分自身を忘れたくないからなんだと思っている。
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