半落ちのレビュー・感想・評価
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わかりやすくいい作品
2004年製作の邦画
当時ベストセラーとなったミステリー小説を原作とした作品
映画化にあたっては、主演の寺尾聰をはじめとする実力派俳優陣が顔を揃えており、当時の邦画界の意気込みが窺がえる。
同時に、当時の邦画が持っていた「社会派ドラマ」へのアプローチや、正義と感情の交錯を描こうとする姿勢も見えてくる。
この物語には、非常にたくさんの対立軸と対照、そして共感を生む仕掛けが巧妙に散りばめられている。
表面的には、警察と検察の癒着や裏取引が物議を醸す社会派サスペンスだが、物語の核心はむしろ「人の感情」や「魂の在り方」にある。
たとえば、
刑務官が収監直前の梶と、彼の骨髄提供によって命を救われた少年を引き合わせる場面。
これは、制度の枠を超えた「人間としての行動」であり、同じような手法が、女性記者・中尾の行動にも見られる。
彼女は組織ぐるみの調書捏造を追いながら、皮肉にも検察と裏取引をしてしまう。
ここに描かれるのは、「正義とは何か」という問いかけである。
物語の鍵となるのは、梶の「空白の2日間」
現役警察官であり、多くの部下を育てた梶が、妻を殺害したこと自体には疑いがない。
しかし、自首までの2日間、彼は何をしていたのか。この空白が、物語の謎として浮かび上がる。
現代の視点から見ると、記者がその空白を追及し、世間の注目を集める展開にはやや違和感を覚えるかもしれない。
今であれば、警察が「調査中」として情報を伏せるのは一般的であり、そこに疑問を持つこと自体が珍しい。
しかし、ここにこそ「物語性」がある。
語らない梶の沈黙に、周囲の人々が意味を見出そうとする。
梶の、空白の2日間の沈黙は単なる逃避ではなく、命と魂、そして人間としての「ためらい」の象徴だったのかもしれない。
そして彼らはその空白の2日間の追及の中で、「魂」という言葉にたどり着く。
梶の動機
命の絆
妻の崩壊と最後の願い
梶はそれを魂の崩壊だと言った。
裁判官の藤林は「魂がなくなれば命ではないのか?」と質問した。
このシーンにこの物語における感情のクライマックスが設定された。
この作品の裏テーマがこの「人の感情」だったのかもしれない。
警察も検察も裁判官も記者も弁護士もみんな、納得できる理由を求めていた。
そこに人は皆同じ感情を持っているという共感が集約されていた。
共感
これこそが「魂」ではないのだろうか?
梶は自分を失っていく妻の最後の依頼だった嘱託殺人を決行した。
そこに感じた「啓子の魂」
それが、崩壊しつつある魂だと思った。
命の絆
血を分けた息子
骨髄を分けた少年
夫と妻
梶はそれらがなければ人は繋がらないと思っていた。
しかし、それぞれの対立の中で人々は、何かに、この場合梶の言った魂について、対立しながらも同じものを持っていることに気づき始める。
それについて問う。
梶が言った魂とは、実は血などの繋がりがなければ「ない」のではなく、共感できたことによって繋がることができるのだろう。
この作品の裏テーマは、「共感」なのかもしれない。
警察も、検察も、裁判官も、記者も、弁護士も、皆が「納得できる理由」を求めていた。
そしてその根底には、「人は皆、同じ感情を持っている」という共通認識がある。
梶の言う「魂」とは、血の繋がりではなく、共感によって生まれる繋がりなのだろう。
だからこそ、人は争い、否定し合いながらも、どこかで理解し合おうとするのかもしれない。
2004年当時の邦画は、非常にわかりやすくしていることがこの作品から窺がえる。
「半落ち」というタイトル
容疑者が罪を認めながらも、動機や背景を語らない状態を指す警察用語。
つまり、真実の“半分”しか明かされていない状態であり、そこにこそ人間の複雑さが宿る。
この隠された半面にこそ真実があることを、すでにタイトルによって示している。
表面上の事実とその事実を起こさせた「感情」
そこに集まった共感と冷徹な判決
それは梶が「守りたかった者」を守るために貫いた意思とそれを汲み取った執行猶予なしという裁判官の姿勢だった。
視聴者への共感を最大限まで引き挙げておきながら、この冷徹な判決に対する割り切れない余韻こそ、視聴者に対して考えさせるための設定だったのだろう。
この世界も人生も「割り切れない」のだろう。
製作から20年経って今なお色褪せないのは、「正義とは何か」「人はなぜ共感するのか」という問いが、時代を超えて私たちに突きつけられているからだと感じた。
わかりやすい作品だったが面白かった。
失う恐ろしさと悲しさが同居してる
邦画の中で大泣き出来る映画があるとの噂を聞き、当時のマ王とその彼女は腕を捲りながら「半落ち」の鑑賞に挑んだ✌️
まぁネタバレが嫌いなマ王だから詳しくは書かないけどラストの30分の検察、弁護士、裁判官の三者のやり取りを見て涙腺が崩壊しない方は一度病院で診てもらった方がいい😐
ただし、この映画は小説とは違う部分が多々あり、小説を読んでから観た方はもしかしたら泣けないかもしれない←ネタバレになるから書かないけど
でもね、樹木希林の証言シーンがあるんだけど「半落ち」の大部分がココに集約されていると思われる🤔
また樹木希林が見事にそれを体現しているから泣けるし怖さも存在してるのよ💦
マ王が一番印象に残ってるシーンでもある😳
ちなみにラストの30分、マ王とその彼女は涙を拭いてると観逃すのでタオルを(ハンカチではなく)目の下と鼻の下に当てて最後まで観たほど泣けたのよ😭
邦画に限らず洋画も含めてこんなに泣いた映画はおそらく記憶に無い🥸
お涙頂戴だけの映画ではなく物語がシッカリしてるのもイカしていると思うんだが、どうして森山直太朗がラストに歌うのかが解せない😑
あの声と映画が合わない気がするのはマ王だけなのか?(森山直太朗が嫌いという話ではないから)
映画館での鑑賞オススメ度★☆☆☆☆(人目憚る事無く泣きたいなら是非DVDをオススメ)
鬼気迫る樹木希林度★★★★★
場違いな森山直太朗度★★★★★
文学界の大事件
小説「半落ち」は2003年第128回直木賞の最終選考過程まで残るものの落選した。選考後、一部選考委員から「致命的欠点が存在」と指摘され、議論を巻き起こした。
動画配信で映画「半落ち」を見た。
劇場公開日:2004年1月10日
2004年製作/121分/日本
配給:東映
寺尾聰
柴田恭兵
原田美枝子
吉岡秀隆
鶴田真由
伊原剛志
國村隼
高島礼子
奈良岡朋子
樹木希林
主演は寺尾聰。
「私は、3日前、妻の啓子を、自宅で首を絞めて、殺しました」
寺尾聰は妻(原田美枝子)を殺害。
妻はアルツハイマー病の症状がかなり進んでいた。
「半落ち」の意味は警察用語で「一部自供した」という意味である。
この裁判を担当し、主文を書く役割の裁判官(吉岡秀隆)の父親(井川比佐志)もやはり重いアルツハイマー病を患っていた。
「自分がまともなうちに殺してくれ」
井川比佐志は吉岡秀隆の妻(奥貫薫)にそう言っていたことを吉岡秀隆は知る。
検察官(伊原剛志)は寺尾聰を厳しく糾弾しながらも、懲役4年という短い求刑をする。
小説「半落ち」は2003年第128回直木賞の最終選考過程まで残るものの落選した。選考後、一部選考委員から「致命的欠点が存在」と指摘され、議論を巻き起こした。
確かに寺尾聰が歌舞伎町に行ったことをことさらに隠す必要があったのかという疑問は誰もが感じるだろう。
寺尾聰から骨髄をもらったラーメン店の青年役にまだ無名だった高橋一生が。
彼のクレジットはないようだ。
個人的には田山涼成、石橋蓮司、奈良岡朋子などのわき役さんたちの演技が好きだなあ。
満足度は5点満点で3点☆☆です。
優れた特異な構成原作、優れた改編脚本
過去のTV録画分の再観賞に続いて、
原作も再読した。
そして、横山秀夫がこの作品で直木賞受賞を
逃した経緯についても知った。
その是非について論ずる能力は無いが、
「半落ち」は優れた特異な構成が生きた、
直木賞受賞に充分値する素晴らしい作品
だと私は思っている。
(尚、この期の直木賞受賞作品は選定無し)
さて、映画の方だが、
原作の最後の章で真相が明かされる
劇的性は無いものの、
原作主旨を損なうこと無しに、
登場人物とエピソードの追加と削除、
また多くの大胆な改編を行い、
2時間強に収めた優れた脚本だったと思う。
原作は皆さん御存知の通り、
各章を全て別の語り手による視点で
時系列的に事件を追う構成になっている。
ひとつの事柄を別の視点で繰り返す
『ラショーモン・アプローチ』の「羅生門」
のような映画はいくつかあるが、
この作品のような、
何人かの視点で時間を繋いでいくケースは
映画表現としては難しいだろう。
そんな制約の中で、梶と志木を中心に据えて
梶の内面に迫った脚本は良かったと思う。
ただ、ラストシーンは、時間的制限からか、
少し集約過ぎてしまったようには感じた。
因みに、私の横山秀夫ベストは、
「クライマーズ・ハイ」です。
この作品は「半落ち」の翌年に出版
されましたが、
「半落ち」を巡る選考の経緯からの
横山氏の直木賞決別宣言が無ければ、
私は間違いなく、「クライマーズ・ハイ」が
直木賞をリベンジ受賞したものと想像
しています。
すべての人の思いが一つに
現代的テーマ、アルツハイマー
柴田恭平を久しぶりに見たような気がする。随分渋い刑事の役だが、かなりインパクトがある。吉岡秀隆は『北の国から』そのままの雰囲気だ。Dr.コトーでも頑張ってるし、かなり売れてますね。『キル・ビル』の田中の親分が弁護士とは・・・うーむ、いいかも(笑)
鶴田真由が車の中でメールしたあとに電話しているシーンで、怒ってワイパーを動かしてしまうのは偶然なのか演出なのか・・・何だか好きだこのシーン。森山直太朗の歌もGOOD!泣かせます。
ストーリーは前半と後半では雰囲気が違います。前半は、警察と検察の確執と捏造問題を中心に動き、新聞社がそれを追う。後半は、検察と弁護士と新聞社中心、柴田恭平は少しお休み。伏線として、どちらの側にも本社復帰、警視庁復帰等、過失がもたらした左遷から復帰する名誉欲がうかがえる。もちろん弁護士にも人道弁護士として有名になり、イソ弁からの独立欲を表している。後半では、空白の2日間を埋めることで刑を軽減しようと試みるのであるが・・・
全体的に人を想うことが重要なテーマとなっていて、「守りたい人はいるか?」「誰のために生きている?」といった台詞が観客にも問われていますね。もちろんアルツハイマー病や骨髄移植のテーマが中心なのですが・・・これは個人的にも泣かずにはいられない問題でした。最初から泣きっぱなしです・・・
見所は、検事佐瀬の部屋!掃除してない・・・俺の部屋みたいだ。
誰の為に生きているのか。
淡々と描いて欲しかった
自分ならどうするだろう…難しい
溢れる涙
肉体と魂と
アルツハイマーの妻を殺めた警官の、殺害後二日間の行動の謎にせまる。...
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