「梶の優しさが伝わってきた」半落ち Chisaさんの映画レビュー(感想・評価)
梶の優しさが伝わってきた
優秀な警察官として知られていた梶が、アルツハイマー病を患っていた妻に「殺してくれ」と懇願され、ついに手をかけてしまったと警察署に自首してくる。
罪を認めて全てを自白する「全落ち」と思われたが、妻を殺してから自首するまでの2日間について梶が語ろうとしないため、事件の全貌が明らかにならない。
警察はとりあえず「死に場所を探して彷徨っていた」ということにして調書を作りマスコミに発表するが、マスコミは納得せず、世間の注目はこの「空白の2日間」に集中する。
梶はそれでもなお口を閉ざし、裁判が始まっても頑なに黙秘を続ける。
「空白の2日間」に一体何が起こったのか。
なぜ梶は何も語らないのか。
◆「空白の2日間」の謎
夫妻は数年前に、一人息子を白血病で亡くしていた。
発病の際に夫妻揃って骨髄移植のドナー登録をするが、息子に適合するドナーは現れず、亡くなってしまう。
しかし死の翌年、梶の骨髄に適合した患者が現れて、手術は成功。
相手に会うことは許されないが、打ちひしがれていた夫妻は息子が戻ってきたように感じ、寛喜する。
その矢先、妻のアルツハイマー病が発症。
少しずつ自分が壊れていくことを恐れて苦しむ妻と、愛する彼女が不憫で仕方ない梶。
ある日、妻は新聞記事で、梶から骨髄移植を受けた相手と思しき人物の投書を見つける。
14歳で手術を受け、今は新宿の小さなラーメン屋で働いているという少年の、梶への感謝の手紙だった。
妻はその投書を見て興奮し、同時に逡巡する。
会いに行ってはいけない、でも会いたい。
息子を失い、自分もアルツハイマーで先は長くない。
ドナー移植を受けられる年齢制限は50歳。
51歳になったらすぐ、夫は私たちの後を追って自殺するだろう。
なんとしてもそれを阻止したい。
投書のヒントを頼りに妻は何度も新宿に行き少年を探すが、見つけられないまま病状が悪化し、ついに事件が起こる。
妻を殺めた後に自分も死のうとした梶は、妻の日記を見つけた。
そこには、新聞の投書の切り抜きが貼ってあった。
梶は堪えきれず少年に会いに行っていた。
しかし、それを証言すれば、殺人という罪を犯した自分の骨髄を、少年が移植したということが世間に知られてしまう。
少年の身を守るため、梶は「空白の2日間」について絶対に語ろうとしなかったのだった。
愛する人が苦しみ続けている姿を目の当たりにして、どんな行動を取るべきなのか。
大切な人を守るために、自分には何ができるのか。
絶望的な状況の中で梶が下した決断と、どんなに周りから揺さぶられてもそれを貫き通す彼の意志の強さや優しさが沁みる作品でした。
◆感想
文章にしたらすっきりした!
こういう映画って、自分の感想うんぬんより、内容を正確に理解して、布石を回収し尽くすことを重視して観た方が面白い気がする。
観終わってすぐは頭の中がまだちょっと混乱していたけど、こうやって一つ一つ書いてみてやっと、
「そうか、梶は少年の身を守りたくて黙秘していたのか」
と理解できた。
最後少年にも会えたし、きっと自殺はしないだろうし、良かったなー。
・・・だけど、同時進行で進んでいた少女連続暴行事件のくだりは梶事件と何か関係あったんだっけ?(結局回収し尽くせてない