劇場公開日 2006年1月21日

「記憶の不自由な数学者と、若い家政婦さんと息子のルートの物語り。」博士の愛した数式 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5記憶の不自由な数学者と、若い家政婦さんと息子のルートの物語り。

2022年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

素敵な映画でした。
とても好きです。
2006年。監督:小泉暁史(黒澤明の助監督としても活躍)

寺尾聰が演じる初老の数学者(この映画では博士と呼ばれます)
博士は10年前の交通事故で脳に障害を受け、そのため記憶が80分しか持ちません。
義姉(浅丘ルリ子)の世話を受けて母屋の隣の離れに暮らしています。

記憶の障害のため、長続きしない家政婦さん。
選ばれたのは33歳でもベテランの家政婦の杏子(深津絵里)でした。
杏子はシングルマザーで10歳の息子を育てている頑張り屋さん。

博士はいつも家の中でも古びた背広姿です。
襟や袖に忘れないことをメモした紙を止めています。
杏子との初対面の挨拶は、
「キミの靴のサイズはいくつかな?」
「24です」
「キミの電話番号は?」
「576ー1155です」
この会話は毎朝必ず繰り返される慣用句です。

杏子さんの息子はルートです。
それは博士が付けたニックネームで、頭のテッペンが平らで、
寝癖で片側の髪の毛がルート記号のように飛び跳ねていたからです。

そして大人になったルートの登場です。
ルート(吉岡秀隆)は大きくなって高校の数学の教師をしています。
吉岡秀隆が博士の思い出を語る形で授業が進められ、母親・自分そして博士との交流が
数学の授業の形で語られるのです。

数学の授業はとても難しい。
階乗。
完全数。
虚数。
素数。
友愛数。
ネピア数。
ルート先生は実に噛み砕いて教えて下さるのですが、
聞いても右から左へ抜けてほとんど私の頭には残りませんでした。
でも授業が心地いい、気持ちいいです。

博士は言います。
数学は宇宙と同じ、直感で感じなさい。
それでいい、分からなくともいい。

博士はルートを心から愛してくれます。
ルートと母親・杏子さんの約束はふたつ。

【博士を絶対に悲しませないこと】
【その話は聞きました、と決して言わないこと】

3人の共通項は《阪神タイガース】でした。
博士の大好きな江夏豊の背番号は28。
そして村山実の背番号は11。
博士にとって数字は必ず意味があり、すべてを数字で考えるのです。
ルートも大の阪神タイガースファン。
(作者の小川洋子さんも奇のつくタイガーファン)

ルートが数学の教師になったのももちろん博士の影響だし、
優しい子に育ったのももちろん博士の愛を受けたから。

博士の哀しい過去。
義姉(浅丘ルリ子)との恋愛と交通事故との因果関係は字数も足りなくなりますので、この辺に致します。
博士の生まれ変わりのように寺尾聰さん。
原作を決して読まないで映画に入るのが作法、とのことです。

琥珀糖
Don-chanさんのコメント
2024年3月28日

琥珀糖さん 共感とコメントどうもありがとうございます。
博士が皆の美しさを引き出していて、本当にステキな作品でした。
数学を丁寧に説明するというシチュエーションから、伝える相手に”良い愛情プラス1”の精神を持つ素晴らしさ、について学びがありました。

Don-chan
りかさんのコメント
2024年1月27日

コメント書いていた記憶はあるのですが、無いですね。
知らないで原作読んでます。どちらが先かは覚えていませんし、
ラスト辺りどうだったか?
深津絵里さんがピッタリ過ぎでした❣️寺尾聰さんは、あっているな、と思ったりもうちょっと数字関連らしく鋭い面があっても、いや記憶無いし、とか色々。深津絵里さんとはピッタリ。切ない作品でした🦁レビューしてないのは、
本サイトに入る以前に鑑賞で

りか