「〇〇〇〇〇〇△た」七人の侍 ストレンジラヴさんの映画レビュー(感想・評価)
〇〇〇〇〇〇△た
「この飯、おろそかには食わんぞ」
午前十時の映画祭15最大の目玉。異例のナイトショーに滑り込む。
通しで観るのはこれが3回目。いやもう、何度観てもめちゃめちゃ面白い。204分という長尺ながら、無駄な展開が一切ない。野武士から村を守るために縁あって集まった侍(自称含む)7名、並の作品であればこの段階で作品がゴチャついて観る気が失せるのだが、本作の7人は言うまでもなく多過ぎず少な過ぎず、そして役割が最適配分されていて非常に観やすい。懸案事項であった音声の聴き取りにくさも許容範囲だったので大変満足した。
名作というものは、何度観ても異なる感情が湧き起こるし新しい視点を得られるものである。3回目の今回は侍たち以外の部分が妙に刺さった。本作の公開年は終戦から10年足らずの1954年。朝鮮戦争による特需景気があったとはいえ経済白書に「もはや戦後ではない」の文言が載るまであと2年かかるタイミングなわけで、そんな中で床に米粒が撒き散らされるシーンはかなり刺激的だったのではなかろうか。同時に中盤、侍たちが村の子供たちにおにぎりを配るシーンでの子供たちの屈託のない笑顔が妙に印象に残る。彼らは戦後生まれなのだろうか?この時代に演技とはいえあれほどの笑顔を引き出せるものなのかと変に感心してしまった。
更に、今回ふと思ったことがある。侍たちの中でも、本作は特に菊千代(演:三船敏郎)なしには語れない。前半のコメディリリーフのような立場から、後半は彼の成長の物語としての側面も持ち合わせる事実上の主役である。彼は基本的に嗅覚で動いている感があるが、注意深く観ていると単なる脳筋とも言い難いのである。断定はできないが、巻物や旗印から識字できているような描写があり、彼の設定から見ると実はかなりの知識層なのでは?という風に見えてくる。もちろん知略では島田勘兵衛(演:志村喬)には到底及ばないが、菊千代の深層に一歩踏み込めた気がして新鮮だった。
そしてリマスターによって浮かび上がった白い吐息。クライマックスの雨の死闘はキャストが凍傷になるほど寒かったというエピソードが残っているが、勝四郎(演:木村功)と志乃(演:津島恵子)の逢瀬の時点で既に息が白い。従来の画質では分からなかった描写が浮かび上がってくるのは、これはやはりリマスターの醍醐味というべきだろう。
毎回毎回「全部を吸収してやろう」という気概をもって臨むが、結局観るたびにこれまで見えていなかった視点が必ず浮かび上がってくる。今回もまた負け戦だったな...。

