「ななにんのさむらい、じゃないよ」七人の侍 あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
ななにんのさむらい、じゃないよ
1954年にモノクロ、スタンダードサイズ、モノラル音声で公開された。1975年の劇場リバイバル時にはステレオ音声での上映。物の本によると、撮影時はモノラルで同録されたが、光学トラックだけでなく、磁気テープでのバックアップ音源が存在するとのこと。ステレオ化はこの音源がもととなった。このサイトのトップページにあるカラーのポスターには「4チャンネルステレオ音声」と表示されているので75年版のポスターなのだろう。この作品にはいろいろな版があり、三船敏郎出演部分のみアフレコして斬殺音(バサッバサッていう奴ね)を加えた音声ヴァージョンもあるらしいし、テレビ上映ではアスペクト比を変えてヴィスタサイズにしたものも観たことがある気がする。いずれにせよ207分もあるのでTVではカットされているシーンもあり、侍たちが相手の根城を逆に襲うシーン(平八が討死する)は久しぶりに観たかもしれない。攫われていた利助の女房が焼死する割と陰惨な部分なのでカットしたくなるかも。
今回の4Kリストア版は、ノーカット(フィルム劣化で失われかけていたカットも回復)、音声は75年版準拠で、モノクロ映像はコントラクトも美しく再現された。ベストの状態だと思う。観るべし、です。
さて今回、改めて発見した点は勝四郎(木村功)の重要性。やっぱり菊千代がどうしても目立っているものの(彼は単なる野生児ではなく「聖と俗」をシンボライズしているかにみえる)勝四郎が伝令として動くことによって黒澤明が意図したジョン・フォードの西部劇的な空間表現ができているところがある。このあたりが「荒野の七人」と違うところであちらさんの劇空間がどうしても薄っぺらいのは本家の勝四郎の役割をきちんと理解できていなかったからだと思う。
最後に、たまに「ななにんのさむらい」と言ってしまう人がいて嫌ですね。純粋な数詞として音読みの「にん」につながるのでやっぱり「しちにんのさむらい」が正しい。
と思ったら、劇中、志村喬さんが「七名(ななめい)」とセリフを言っているのでビックリ。昔から誤用っていうのはあるんですね。聞き取りやすくしようと言う配慮があったのかもしれないが。



