「人が生きている。暮らしている。(4Kリマスター劇場鑑賞後、追記)」七人の侍 リュウジさんの映画レビュー(感想・評価)
人が生きている。暮らしている。(4Kリマスター劇場鑑賞後、追記)
DVDで鑑賞したのは数知れず。
劇場で見るのは4度目だろうか。
今回は初の4Kリマスター。
でも少し心配。あまりにも鮮やかすぎると映画の印象さえ変えてしまう。
その経験を「隠し砦の三悪人」BDクラリオン版で経験したからだ。
(寝ていたもぐらたちが暴動を起こしたシーンが明るすぎて…)
それでもこの映画を劇場で見る機会を逃す手はない。
結果、杞憂だった。
休憩をはさんで207分。
登場人物たちの台詞もおよそ覚えていて彼らが口に前にそらんじているのに、
身も心も映画にのめり込んだ。
さらに映像が鮮やかだからだろうか、それとも大きなスクリーンだからだろうか、
アスペクト比4:3なのに奥行きの深さはもちろん広がりも感じた。
そして何より音。家のテレビのスピーカとは違う(当たり前だww)。
登場人物たちの新たな表情と目線の発見はもちろん、さらには着物の柄!
(菊千代の柄が矢羽根だったことを初めて認識した)
砂埃、屋根の上ではためく幟旗、勝四郎が寝転んだ顔の傍で咲き誇る花たち、
遠くから見える最後の決戦で村を必死に走る百姓たち、
野武士が来た時に水車小屋にこもった長老の背中、
菊千代に我が子を差し出した時の瀕死の妻の目、
野武士の頭目を刺殺した後に雨に打たれる菊千代の命が抜けた姿、
燃える火を見、利吉を見てもひとこともしゃべらなかった利吉の女房、
唾を飛ばしながら勘兵衛に百姓が言えないことを訴える人足の髭面…。
いいシーンはいくつでもある。いやすべてがいいシーン。
黒澤監督、黒沢組の人たちはどこまでこの映画を計算し、
シナリオを描きカット割りをし、フィルムに写す俳優たちの立ち位置を決めたのだろう。
映画が終わってからもしばらく立てなかった。
いつもだったらすぐに喫茶店に入って小説を読み始めるんだが、それもできなかった。
(映画のことを考えながらずっと歩き回った)
余韻と、その余韻を楽しむ歓び。
いい映画ってこういうことなんだろうと感じた。
(前回レビュー)-----------------------------------------------------
エキストラなんて出でいない。
役名のない人たちも映画の中で生きている。
その時代、その時、その宿場町に生き暮らしている人のように演出している。
それを思い知ったのは、たとえば久蔵の真剣での決闘シーン。
見守る勘兵衛と勝四郎の大写し。彼ら二人の目の動き。
その二人の後ろで決闘を見守るたくさんの人たちの表情と動き。
さらに決闘後。木賃宿に戻る勘兵衛が五郎兵衛に
「今、人一人を斬るのを見てきた」と告げた時に
その現場に向かう人たちと少しでも離れようとする人たち。
スクリーンで、DVDで、サブスクで、何度見ただろうか。
見るたびに発見があり、この映画の凄みを実感する。
まだまだ黒澤明監督の凄みがわかる場面があるはずだ。
あと、何度この映画を見るだろうか。

