七人の侍のレビュー・感想・評価
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人間のしぶとさと多面性
言わずと知れた不朽の名作とは知っていましたが、実はちゃんとスクリーンで観るのは初めて、というものです。
「ごろつきの暴力にあえぐ百姓の村を男気ある七人の侍が助ける話」だと思い込んでいましたが、そんな単純な内容ではまったくありませんでした。
休憩をはさむほどの長い作品なので、名高い(?)たたかいの場面にいたるまでのいきさつが非常に丁寧に、時間をかけて描かれていました。
百姓たちが用心棒の求人活動で町を訪れる場面で、「腹が減りゃ、クマだって山を下りるだ」という台詞があり、まさか現代日本人がこの台詞に震えあがる日がくるとは、さすがの黒澤明監督も予想できなかっただろうなぁ、なんて思いました。
前半は、腕に覚えありの食い詰め浪人たちが、人の縁があったとはいえなんの利もない仕事のために仲間になるのが、不思議でもあり、頼もしくも感じました。(腹いっぱいのゴハンが報酬とはいえ)人はパンのみで生きるものではなく、自分の能力を活かして働ける場=自尊心の満足、が必要なんだなぁと思います。
後半は、「助けがなければ何もできない烏合の衆」だと思っていた百姓たちが実は一番しぶとく、どんな災害もうまくやりすごして日常生活を守っていくんだ、こうやって歴史は続いていくんだ…というのを、空恐ろしくさえ感じながら思いました。
時間は短いながら鮮烈な印象を残す「娘」「妻」の場面も、この状況で??という人間の欲望をギラギラと映し出していました。
野武士の視点はゼロだったので、彼らは「マッドマックス」「北斗の拳」の悪役よろしく惨殺してもスッキリするだけの扱いですが、百姓たちが竹槍でめった刺しにする場面は「八つ墓村」の落ち武者惨殺シーンを思い出して恐ろしかったです。
人間にはいくつもの顔があり、複雑で不条理で、矛盾を内包しつつもうまいこと自己弁護しながらしぶとく生きていけるんですね。
うまくいかないことに直面した時、大人しく自分を責めて自滅してしまう人たちには、この百姓たちを見習って強く生きて欲しいものです。
日本映画の骨頂
4Kリバイバル上映で鑑賞。
まず、、長い!…のを感じさせないくらい面白かった。
初めて作品の中に休憩という概念があるのを知る。
慣れないモノクロ映画であったけれど、昔の役者は演技力が高くて映像にはなんら違和感がない。何を喋っているかわからないことが多いが、そこまで気にならない。
いきなり騎馬の迫力から驚く。どう撮影したんだろうと感心しながら観た。後に騎馬とも戦になるが、恐ろしくて立ち塞がれないだろう…と。
百姓のシーンから始まり、この時代に生きていくことの厳しさを知る。菊千代が侍へ百姓の生きていく厳しさを語るシーンも刺さる。
侍が続々と加入していく頼もしさたるや。
侍の指導のもと、一つの村が作り上げられていく高揚感。
村が襲われ、仲間が死んでいく衝撃。
戦が終わり寂しげに佇む墓。侍が得たものはなんだったのだろうか。
全てがスムーズにつながっていた。
見応えたっぷりの作品を堪能させてもらった。
午前十時の映画祭で体感!『七人の侍』の迫力をスクリーンで味わう
午前十時の映画祭で『七人の侍』を映画館で鑑賞。地上波やDVD、サブスクで何度も見てきたが、映画館での鑑賞は初めてだった。観客は約40名で、年配者が多い中、若年層もちらほら。
物語は、戦国末期の山間の村を舞台に、野武士の襲撃から村を守るため七人の侍が集結する話。中心人物は知恵と経験で村を導く勘兵衛、粗野だが情に厚い菊千代、若き勝四郎、そして村人たち。侍たちは村人に戦い方を教えつつ協力し、激しい戦いの末、村を守る。戦いで多くの侍が命を落とすが、村人の生きる力が勝利の本質であることを示す結末が印象的。
映画館で見ると、画面の迫力や戦闘シーンの緊張感、音響の臨場感がこれまでの映像体験とは全く異なり、侍たちの緊張や村人たちの必死さがよりリアルに伝わった。特に、七人の個性の対比や村人との交流の描写が鮮明で、人物一人一人の物語性を再確認できた。
総じて、これまでの視聴では気づきにくかった戦闘の緊迫感や村人と侍の関係性の深みを、映画館での体験で改めて味わえる鑑賞だった。
① 戦の虚しさと生きる力
侍たちは勝利しても多くを失う。だが百姓たちは再び田を耕し、命をつなぐ。黒澤はここで、「戦士の栄光よりも、民の生活こそが永遠」であると示す。
②「身分と人間性の対立」
菊千代が叫ぶ「百姓ほど悪ズレした生き物はない!でもそうさせたのはお前ら侍だ!」という言葉に、封建社会の矛盾が凝縮される。黒澤は、人間を分断する階級そのものへの批判を込めた。
③「共同体の力と個人の運命」
侍と村人の協働によって村は守られるが、侍は常に〝余所者〟〝根なし草〟として去る。これは、共同体の勝利と個の孤独という普遍的な主題である。
④ 「リーダーシップ論」
勘兵衛の判断力・菊千代の情熱・久蔵の技――それぞれ異なる「力」が集まり、戦いが成立する。黒澤は多様な個性の結束を描く。
最期にーーー
最後に残るのは、百姓の田植えと侍の墓。
「勝ったのはあの百姓たちだ」という勘兵衛の言葉には、
「命をつなぐ者こそ、真の勝者である」という黒澤哲学が込められていた。
「七人の侍」を"6人のおじさま"と観た。
黒澤明監督「七人の侍」
"午前十時の映画祭15"で、
20:15からの回で観ました。
終了が0:00とは何故に?
207分のはず、おかしいな??
答えはそう!
"本物の休憩"がありました(^。^)
どどん!と"休憩"の力強い文字が映し出されたが、インド映画のインターミッション詐欺、0分に慣れているので席を立つつもりはなかったが。。
おじさま達皆んなトイレ行った!
え!本物?!
じゃ、アタシもトイレ!
全員揃ってトイレへGO!
上映途中なのに誰も居なくなった。
何か不思議な感覚でテンション上がってしまい、トイレ帰り、又皆んなで部屋に戻る途中で、おじさま逆ナンしてしまいましたw
「休憩初めてです!」
「これはね、あるんだよ休憩♪」
おじさまが得意気で嬉しそうだったのは私の勘違いではないと思う。
今「七人の侍」を観に来ている。
話しかけても良いはずです♪
で、ですね。
この「名作」を今回初鑑賞なワタクシ。
はい。どなたも存じ上げない。
唯一お名前だけは知っている三船敏郎さんもどの役かわからずの鑑賞でした(°▽°)
追っている監督作品でもなければ、贔屓の役者が出ている訳でもない。
それなのにこんな私でも、この凄さがわかる凄さ!
噂通りのとても力強い映画でした。
聞き取りにくいセリフに加え当時の言い回しにも苦戦した。
加えて白黒映画という私にはハードル高めの作品にも関わらず、どんどん吸い込まれていった。
決して楽しい話しではないのに、この高揚感は何なんだ。
野武士から村を守る為に侍を探す前半、村に付いてからいざ、決戦!の後半。
ストーリーに100%のめり込んでいるにも関わらず、映画としての完成度の高さ、細部まで手を抜かない画作りに唸りっぱなしで、頭の中はそれぞれが同量の熱量で「七人の侍」が鳴り続けていた。
これは正に体験だった。
優れた作品は何度見ても心揺さぶられるし新たな発見もある。
噛む程に味が出るスルメ。
しかし私が味わったこの『驚き!』は、初めてこの作品に触れた人だけがもらえるギフトだ。
一生忘れない記憶の始まり。
私は体験してしまった。
今後は初見の人を羨ましく思うんだと思う。
凄い映画だった。
ラストの墓前のシーンと勘兵衛の台詞が深すぎて深すぎる。
(あれは中々出ないよなー
凄い脚本だな)
弱くて強くて愚かで賢くて、薄情で厚情で
したたか。
そして時には人の為に命をもかける不思議。
完全な善人も悪人もいない。
善悪で割り切れない事もある。
喜ぶし怒るし泣くし笑う。
しぶとく生きる人間の姿はいつの時代も変わらない。
人間の複雑さを見事に表現していたと思います。
『○○○○○○△た』
揺れる旗に全て詰まっていました。
ミクロとマクロ
極上のエンタメ映画。
めーちゃくちゃ面白かった!!
これが素直な感想です。
1つのエンタメ作品として物凄く良く出来てる。
「名作」だの「歴史」だの、そんなの抜きにして、笑って泣いてしんみりして、最高のエンタメ作品でした。
自分の中で悪い意味でハードルを上げすぎてました。
時代劇だからとかモノクロだからとかそんなの全然気にする必要ないです。
バックトゥザフューチャーとかターミネーター2とか、ああいうエンタメの名作と同じ感覚でフラットに見て十分楽しめる映画でした。
70年前の映画なのにギャグシーンでみんなが声を出して笑って
キャラ立ちしまくってる侍達一人一人に感情移入して
気がついたら全員の事が好きになっている
「名作は色褪せない」って言葉を何度も聞いてきたけど、これほど忖度なしにめちゃくちゃ楽しめたモノクロ映画は初代ゴジラ以来でした。
仲間集めの前半パートがとにかく好み。
どのキャラも小粒ながら良いエピソードがしっかり付いてくる。
洋画で言うと「アルマゲドン」の前半なんかに近いノリです。
そんな気の良い奴らが1人、また1人と命を落としていくのは本当に辛くて。
でもそんな中でも大人達は若者を守ろうとしていて。そんな姿に涙している自分がいました。
2001年宇宙の旅よろしく、中盤で「休憩」が設けられてるのも最高でした。
今の映画にはほとんどない幕間の休憩。
これもこれで1つの体験として好きだったりします。
映画館で、スクリーンで見れてよかったと。
心の底からそう思える作品でした。
雑感・・
古き名作を観る喜びともどかしさ
午前10時の映画祭で4Kリマスター版を2025年10月に劇場の大きなスクリーンで観賞することの多幸感。
過去の名作を観賞することは、とても幸せなことだと思う反面、古さを感じてしまい乗り切れなかったり、当時の感動が削がれてしまうことがある。
本当に力がある作品は時代が経とうとも作品自体の魅力は変わらないのは間違いないことだが、やはりその時ならではの時代感を感じ取れないのも事実だろう。
つまり昔の映画というフィルターにかけて、何らかの補完をしてしまうことは致し方ないことだと思える。
つまり当時に観て感じただろう感動を得られない、もどかしさがそこにある。
この偉大な作品に現在観たレビューで3.5しか付けられないもどかしさ、当時なら4〜4.5あるいは5点満点を付けただろう感動を得ることの出来ないもどかしさ。
あと新4Kリマスターによる驚くほどの画質も称賛に値するし喜ばしい限りなのだが、反面美し過ぎて人物と背景が合成ぽく感じてしまい、無用な違和感を感じたし、悪く言えば加工しているのだからCG画像なんだなと思う。
音の飛んだ傷だらけのフィルム画像でノスタルジーにふけって観たい訳ではないが、時代性を感じずその時代に素直な一映画ファンとして封切り館で観たかったと、ただただ思うばかり。
207分もの長尺をダレることなく見せ切り、あらゆる映画要素が詰め込まれた金字塔と呼ぶに相応しい偉大な作品「七人の侍」、過去に戻ることが出来ないならば、今現在の最高の状態で劇場の大スクリーンで大いに堪能するしかない。
報われなくても善きことをする——戦後日本を癒し支えた「敗者の倫理」
3週間限定の4Kリバイバル版上映。ずいぶん以前、ビデオで2回ほど観ているはずだから、もう観なくてもいいかなと思いつつ、映画館で観たことがないしので、錦糸町TOHOに行ってみた。20代と思われる若い人がかなり多かったのが意外だった。
初見に感じる場面が多かった。この映画を元に作られたたくさんの映画、特に「荒野の七人」や「マグニフィセントセブン」などとごっちゃになって記憶がずいぶん改変されてしまったようだ。
冒頭の盗賊集団が馬で駆け抜ける場面から記憶になかった。ここだけで、騎馬のスピード感と重量感に圧倒され、そして、最後まで圧倒され続けた。これまで70本の感想を書いたけれど、完璧な映画が現れた時のために5点満点はどんなに感動してもつけなかった。しかし、新作ではない、この70数年前の映画に満点をつけざるを得ない。
エンドロールもなくスパッと迎える終演後、拍手が起こった(僕はぼうっとしちゃって拍手できなかった)。とにかく圧倒的な映画であることを確認できてよかった。世界的にそういう評価が定着しているから、言うまでもないのだけれど、それを実際にスクリーンで観て確認するかしないかは大違いだ。
今回、気づいたことをいくつかまとめておきたい。
まず、この映画が作られた時代背景との関連について。
本作は1954年で71年前に公開された白黒映画だ。
戦後9年。GHQ占領が1952年に終わり、やっと検閲なしで映画を作れるようになった時代。リミッターなしで全力で最高の作品を作るーー。そういう黒澤監督と、日本の映画人たちのチームの想いが伝わってくるし、その想いで団結した一流のプロたちの最高の仕事の凄みを感じさせられる。
「スター・ウォーズ」の生みの親ジョージ・ルーカスが黒澤からの影響を公言しているのは知っていた。僕はキャラクター造形のことだと思っていて、それは確かに観て取れた。
同時にストーリーの流れ(映画の構造)も酷似している。主人公が決意し、個性豊かな仲間を得て、世界のために戦い、達成する。これは、ハリウッド映画のテンプレでもある「英雄の旅」の構造そのものだ。
この構造は1949年に刊行されたジョーゼフ・キャンベル「千の顔をもつ英雄」で提示され、近年のハリウッド脚本術の本を読むと、さらに細部に渡ってマニュアル化されている。黒澤はキャンベルの本は読んでいないようだ。映画史研究にはちゃんと書いてあるのだろうけれど、知らないので推測すると、この「七人の侍」が「英雄の旅」の構造で圧倒的な物語を作り上げたことが実証例となって、ルーカス始めテンプレとなるほどハリウッドに強い影響を与えたということなのではないだろうか。
ただ、大きな違いもあると感じた。典型的な「英雄の旅」は主人公の成長と自己実現の物語。成長した主人公は、困難だけれど世界にとって素晴らしいことを成し遂げて、人々から賞賛される。つまり、世界に貢献し、貢献した人々から強く承認されることでさらに報われる。
しかし、「七人の侍」では、主人公たちは貢献した相手から承認される場面はなく、自己実現した!という分かりやすいカタルシスは描かれない。最後の場面では、ファンファーレがなって、人々から賞賛されるかと思いきや、人々は以前の生活に戻り、田植え唄などを歌って、以前の生活に戻れたことを喜んでいるだけである。そして、主人公も「また負けた」と言っている。
人々からの承認はないし、主人公も多くの人を死なせた罪悪感や、もっと上手くやれたのではというような後悔を感じているようだ。
つまり、英雄にはなんの報酬もメリットも勝利の喜びもないのだが、ただ一つ「私は私にやれる善きことを精一杯やった」という倫理的な満足感は感じていると思いたい。「負けてもいい、自分にやれる善きことをやればそれでいい」というこの物語は、終戦からまだ10年経たない日本人の大きな癒しになったのではないだろうか。
それに、新自由主義、個人主義が進んだ70年後の今こそ、こうした職業観や倫理観は改めて見直し、自分の中に実装したいものでもあると思う。
主人公の勘兵衛を演じる志村喬は、この作品の2年前の黒澤作品「生きる」でも主演を務めている。こちらはお役所仕事を長年続けてきて定年間際の市役所のさえない市民課長が、ガンになってしまい、最後の仕事として公園作りに奔走する物語だ。誰もその仕事ぶりを承認しないのだけれど、主人公は「私にできる善きことがある」と、その小さな仕事のために残りの日々を使う。
報酬も承認もいらない。生きてきた証として自分のできることをやる。
自分が自分を承認できればそれでいいーーこの姿勢は、「七人の侍」の勘兵衛と完全に重なるし、公開当時の観客も志村喬演じる二人を重ねて見たはずだ。
勘兵衛と共に戦う侍と農民も、それぞれ違った動機と価値観を持っていて、一人一人が印象深い。特に印象に残るのはやはり三船敏郎演じる自由奔放な暴れん坊の菊千代だ。
英雄性のかけらも感じさせない破天荒で未熟でバカにも見える菊千代がトリックスターとしてこの物語では重要な役割を果たす。ここもしびれるところだ。
菊千代の侍姿はコスプレで、実は農民だ。農民らしい控えめさ、周囲と同調してコツコツ働く姿勢とは無縁の菊千代は、おそらく農村で浮き上がっていたのではないだろうか。そして、農村を離れ、戦国のどさくさに紛れて、浪人侍のコスプレをしたのだけれど、侍からも仲間にしてもらえない。どこにも居場所がない孤独な人物であり、アイデンティティも持てない根無草なのだ。
そして、どこに行っても浮いてしまう人物だからこそ、価値観も考え方も生き方も違う異質な人間=侍と農民を精神的に結びつけることができるというストーリーには引き込まれてしまった。三船演じる菊千代がいなかったら、この映画は随分地味な映画になっただろう。本作を元に作られたアメリカ映画では菊千代的なキャラは見当たらないように感じる。ハリウッドも、三船演じるこのキャラクターは再現不可能と諦めたのかもしれない。
若い人たちが大勢見にきていたのは、スターウォーズやアベンジャーズの原型がここにあるということが知られているからだろうか。いや、それら以上に面白い凄い日本映画があるという評価まで広がっているのだろうか。
有名な作品だけれど、劇場で見た人はもう80代、90代の先輩方以外には相当少ないだろう。大きなスクリーンで見なければ、真価はわからないし、何よりこの迫力も味わえない。この機会に観ておいてよかった。
TOHOシネマズさん、ありがとう。
【新4Kリマスター版上映】70年前なのに普通に(いやそれ以上に)面白いのがすごい!!
最新4Kリマスター版で初上映!より鮮明な音と映像で!
黒澤映画、いや、日本映画の金字塔!!
ですが何より、70年も経っているのに、今の感覚で普通に楽しめることがすごい!
まさに、映画の面白さが詰まってます。
前半の7人の仲間を集めるところから、キャラクターとエピソードがそれぞれ面白い。
今回は割と地味な、加東大介、千秋実、稲葉義男が良かった!
後編は、やはり何と言っても戦闘シーンのダイナミックさ、大迫力とリアリティ!
いわゆるチャンバラ映画、時代劇、のような上辺の『殺陣』(たて)とはまったく異なる、実践的な「戦い」、戦争がリアルに描かれています。
何本も刀を用意して、あちこちに立てたり、暴れる馬たちの危険な撮影など、数々のアクションシーン。
それだけでなく、その背景にある身分制度や、百姓たちの困窮した生活、そして百姓たちもまた生きるためには、落ち武者狩りなど強かさもある。
そのことが野武士の集団を生んでいるかもしれない。
百姓もまた、ただ弱い善人ではないというリアルまで描いているのがすごい。
「午前十時の映画祭15」では間に「休憩」があり、公開時同様に楽しめるものいいです。
刺さらなくて残念。。
傑作と言われている作品だったので、せっかくのリバイバル上映だから見てみよう、と思いましたが。。
セリフが聞き取りづらいのは、考察動画などを見たら監督の考えでリアリティを追求した結果、農民がそんなにクリアに話すはずない、ということから日本語なのに聞き取りづらく、日本語字幕が欲しい感じになったそうなんですが。。
やっぱり登場人物が何を話してるのかよく分からない部分があるというのは視聴のストレスなので、私には合わなかったです。
*****
そして場面場面での説明が足らない。
例えば農民の中で、女房の話になると取り乱し、さらに敵の陣営にいる女性について「あれは俺の女房なんだ!」的な発言をしていたように思いますが、
かつての襲撃でさらわれてしまったのか?例えばそうなら何故味方の侍達に事情を言わなかったのか?敵陣営にいる女性なら戦いに巻き込まれて怪我や命の危険があるんだから「こういう女性がいたら俺のさらわれた女房だから先に助け出してからの攻撃にしてもらいたい」とか説明しなかったのが不自然に思いました。
*****
あと村の娘と恋仲の感じになった味方の若侍。幻滅しました。身分制度のある時代とはいえ、彼女が父親に怒られていた時、きちんと名乗り出もしない。すぐそこに居るのに彼女を庇って父親から守ることもせず、「生半可な、遊びの気持ちなどではありません!」とかを宣言するわけでもなく、ただうつむいて佇んでるだけ?最低。。
そりゃ今すぐ正妻として娶るのは無理かもしれないけどなんかこう、もうちょっと何かちゃんと自分の気持ちを表明出来ないの?情けない。。!
で、映画的にもこの2人の行く末を何もフォローすることもなく、
ただ彼女は傷ついて彼に目も合わせず、彼も声をかけることもなく(せめて元気でとか、また会いに来るとかぐらい言ってくれればまだしもなーんにも台詞すら無く。。)
ボーっと彼女を見つめて映画も終わり。
え?モヤモヤしすぎで、村を40騎もの野良侍達?から守ったことも何もかも全部チャラになってしまいました。。
時代背景?男尊女卑が普通の時代だったから?身分が違うから遊びでしかないの?え?何なの???と疑問ばかり。
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あと。。三船敏郎さん、賑やかしでなんかぶっきらぼうなだけであまり主役級の存在感がなく。。
作戦も1騎ずつ村に入れて1人ずつ倒そう、というのは最初はいいけどいつまでもこの侵入の仕方に何故敵はいつまでも乗ってくれるのか?騎馬がもっと密集してくるなり。。敵側の作戦会議とかの場面が無いのでなんか敵の考えが分からず、作品に没入出来ませんでした。
最初に2〜3人が倒されたら、いったん作戦立て直さないの?普通。。こういうものなんだろうか。
七人の侍のリーダー格のお侍さんは思慮深いし村の防衛作戦も立てて頼もしいし人望もあるキャラクターで良かったけど、映画そのものとしては驚くほど刺さらなくてとても残念でした。
4Kは凄いな
初めて映画館で見ました。4Kリマスタ版です。
長い映画なので途中5分位休暇がありました。
映画自体はTV放送の録画で見た事はありますが、それも随分昔の話。
SD画質とは大違い。とにかくセットや着ているものの細部が鮮明。
かなり凝った造りだとは思っていましたが、本当に凄いセットだ。黒澤明の拘りは凄いと聞いていたがこの時代からこのレベルとは恐れ入りました。
茅葺き屋根の農家の作りといい着ているものの程よいボロボロ具合といい本当にその時代に放り出されたかの様な作りに感動。再現具合が半端ない。
セット自体に年季を凄く感じる。何年前からそこにあるのか?って感じる位。
物語自体面白いのだが、三船敏郎演じる菊千代が猿の様にキャキャしていてお尻丸出しの演技。
いや大昔から分かっているんだけど本当に凄い演技をしている。他のキャストも皆全力だ。今の時代劇、少し前の時代劇でもここまではやらんだろうって感じの事をやっていて泣ける。
全てが大作を作り上げてると改めて感心した。
若干残念な所は刀で切りかかっても突いても血が出ない事だが、まあ仕方ないのかな。
決戦シーンのすごさ
午前十時の映画祭で観ました。
タイトルの通り、雨が降る中の決戦のシーンはすごいですね。
雨で土もぬかるむ中、人も馬もみんなぐちゃぐちゃになって戦う。派手すぎるバトルアクションではなく、雨と土の匂いが感じられそうな、文字通り泥臭い戦いの様子が伝わってくる映像で感動しました。
また、初めは百姓は弱い立場で侍に頼るほかないという構図だったものが、最後は取り戻した平和を謳歌する百姓と墓を前に沈黙する侍たちという全く違う構図になってしまうのは印象に残りますね。完全なハッピーエンドでもなく、かといってバッドエンドとも言えない、でも物語の終わりとしては綺麗だと思いました。
誰か一人、物語の軸となる明確な主人公がいるわけではないのに(いないからこそかもしれませんが)、個性豊かな侍たちのしっかりとしたストーリーがある、良い作品だと感じました。
やっぱり最後は百姓が勝つ
『百姓は雨が降っても嘆くし晴れ間続きでも嘆くそして風が吹いても嘆く……そぅいつでも嘆くのだ。。』 日本人は元来農耕民族なので…
この作品は数十年前に大森の映画館でリバイバル放映で観る事が出来た。黒澤明監督の原点であり世界の至宝である。この作品を表すには星5つでは全く足りず其れどころか星の数で表す事自体が失礼極りないと言える。
この作品と言えばあの雨の中での合戦シーンが余りにも有名だが、、、実は三船敏郎の役が素晴らしいのである。ある種の狂言まわしの様でもあり主人公の様でもあるそして時にはコメディアンの様でもある変幻自在の役回りを演じている。この役柄が素晴しくこの作品を超一級品へと押し上げている。またこの作品の魔法なのか207分の上映時間を全く感じさせない。
現在"午前十時の映画祭15"で新4Kリマスターによって3週間上映となっています。家のテレビでは無く是非劇場の大画面でこの至宝の作品を観て欲しい。昔同様トイレ休憩もちゃんとあるのでご心配なさらずに。。
【追記】
この作品では昔の白黒35mmフィルムであったので現在のようなワイド版ではありません。なので劇場の席もいつもより前よりの席に座った方が良いです。後方に座ってしまうと画面がいつもより小さく見えます。それではこの映画の迫力が半減してしまいます。少しでも前よりの席での視聴をお勧め致します!
神が作った映画。
いつか劇場で観たいと思ってた、国内外、映画はもちろん、アニメ、ゲーム含めてあらゆるコンテンツに影響を与えまくった日本が誇る世界のクロサワのレジェンド作品。
新宿、日本橋は満席で錦糸町まで行ってきました。
休憩ありで劇場にいたのは4時間くらいですか。最近、長尺な映画も多くなり、終わったあと長すぎるとか思うこともあるのですが、あっという間の4時間でした。休憩前の前半で、どんどん面白くなっていきますし、なんなら後半の体感時間の方が短く感じるくらい。もう、終わり?もう少しこの世界にいたかったと思うほど。
三船敏郎さんとセットで語られる作品なので、なんか重たい感じに思ってる方もいるかもしれませんが、ギャグ担当でビックリ。会場からも笑い起こるほどでした。
冒頭から百姓が野武士に襲われてる集落の用心棒になってくれる侍を探すところから始まります。それだけ読んでもへー何かおもしろいのかな?という感じですよね。はい、「マッドマックス」です。
で、百姓の会話シーンが続くのですが、なに言ってるか全然聞き取れない。言葉自体、殺すということをつっ殺すと言ったり、なじみのない言葉だからというのもありますが、後半まで観ると映像で補完したりもするので、最近だと「宝島」の沖縄言葉みたいに、ワザとわかんなくしてると思いました。このあたり、海外だと全部訳がつくので理解しやすく、だから海外の方が評価高いのかなと思いました。
あとは、キャラクター造形、ワンシーン、ワンカット、どこをとってもどこかで観たことがあると思わせる既視感がすごかった。これは、あらゆるコンテンツでサンプリングされまくってるからだと思います。そして、そのオマージュは現在進行形で続いているのだなと感じました。
このあたり、あとあと調べてみるのも楽しそうです。ボクは志村喬さんがモーガンフリーマンに見えて仕方なかったですし(セブン撮る時に監督が、「セブンスサムライのミスターシムラみたいに演じて欲しい」とか言ってそう)ババアが出た時はジブリアニメの実写きた!と思いました。モブの描き方とか三船さんの衣装、性格付けかもそうで、宮崎駿さんが影響受けてるのは間違いないと思いました。
神が作った映画。どのタイミングで観るかによって楽しみ方も変わるかと思いますが、是非劇場でご覧ください。
まごうことなき映画史に燦然と輝く傑作中の大傑作。絶対に映画好きなら一度は観てほしい作品ですね。
まごうことなき映画史に燦然と輝く傑作中の大傑作。
毎年必ず1回は観たくなりますが、今年は運よく「午前十時の映画祭15」にてなんと!新4Kリマスター版にて3週間限定上映。
グランドシネマサンシャイン池袋さんではありがたいことに19:00の上映回もあり、早速劇場へ。
場内は老若男女幅広いお客様でキャパ150席のスクリーンは満席の大盛況。
『七人の侍』(1954年/207分)
初公開は『ゴジラ』と同じ70年前の1954年。今思うと凄い映画の当たり年ですね。
制作費は当時の通常映画の7倍に匹敵するようですが、戦後わずか9年でこれほどの超大作を撮りあげた当時の映画界の勢いと熱量には敬服の念を禁じ得ません。
視覚的に印象深いのはクライマックスの豪雨の決戦シーンです。「西部劇が砂埃なら時代劇は雨だ」と、とにかく激しい豪雨の中で、今までの歌舞伎のような殺陣を廃し、時代考証に基づいた不格好で泥臭く、人を斬る効果音を使わず、刃こぼれまで表現した実にリアルで迫力のあるアクションは70年経った今でも決して色あせません。
「残る野武士があと何人か」「どのような陣形か」という説明も都度わかりやすくインサートされています。決戦のゲーム性とエンターテインメント性も非常に高いですね。
若いころはクライマックスの決戦シーンに血沸き肉踊りましたが、歳を取ると侍集めや、侍同士、または侍たちと村人の気脈が通じる前半部分に趣を感じるようになります。
とにかく橋本忍、黒澤明、小国英雄の脚本が完璧で飛び抜けていますね。七人の侍をはじめ、一人ひとりの農民に至るまで、個々の登場人物の性格や背景、思想信条が詳細に設定されていて、過度なセリフによる説明ではなく、さらりと彼らのたたずまいのみでしっかりと描かれています。
敗戦続きで歳を重ねた個性豊かな凄腕の浪人たちが、野武士から農民を守る大義のため、まるで自らの死に場所を求めるかのように島田官兵衛(演: 志村喬氏)のもとに集い、出自が農民の菊千代(演: 三船敏郎氏)の不思議な魅力に次第にチームビルディングされる過程は実に見事です。
また農民の描き方も、ただの弱者ではなく、武士の好き勝手な振る舞いのため臆病だけどずる賢く立ち回る存在に描かれているのも秀逸です。その臆病でずる賢い農民を万造(演: 藤原釜足氏)が具現化していますが、きちんとぼけた与平(演: 左卜全氏)が見事に中和しているのは上手い設定です。
最後も生き残った若侍・岡本勝四郎(演: 木村功氏)と万造の娘・志乃(演: 津島恵子氏)の恋模様も、勝四郎が農民となって志乃と夫婦になるような単純なハッピーエンドで終わらせないところは、「最後に勝ったのは百姓だ」という台詞の余韻を残す上で最適解ではないでしょうか。
逆に、敵の野武士に関しては、あまり台詞を喋らせない無個性な点も上手いですね。
個性的な侍たちは誰もが抜群に魅力的ですが、個人的には宮口精二氏が演じた痩身の剣客・久蔵がニヒルでクールで、しびれるぐらいのカッコよさです。強さのみを求道する宮本武蔵がモデルで、当初は三船敏郎氏の配役予定だったらしいのですが、急遽菊千代の役が必要になったのでスライドしたとのことですが、三船氏の久蔵でしたら、また全然違った作品になったでしょう。
特に今年にはいってAI技術が急速に進化。
映像化不可能なことはすでに一切なくなってきており、黒澤映画のようにきちんと奥の方でも誰かが演技をしている、常に雨が降っていることなど造作もなくなってきています。
最終的にはやっぱり脚本。
今まで以上にホンの面白さが映画の成否に関わってきそうです。
絶対に映画好きなら一度は観てほしい作品ですね。
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