「恋に殉じた男」仕立て屋の恋 kakerikoさんの映画レビュー(感想・評価)
恋に殉じた男
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思いを貫く男とも言える。外見は物静かで普段着のトラディショナル・スーツ姿が彼という人を物語っている。ある事件から周囲の人にも受け入れられず、一見人間嫌いのような風情でいて、しかし内面はそれとは裏腹に、静かに決して消えることのない慕情を人に対して抱き続けている、そんな印象を受けた。
アリスとのこともそうだが、大切に飼育していたハツカネズミを、線路の上に餌をばらまき、ケージの扉を開けて逃がしたあのシーンが強烈で、忘れがたい。彼はそういう人なのだと思わせてくれた。
この作品は殺人の犯人探しのサスペンスが絡んではきているが、それ故にアリスも仕立て屋もその犠牲の悲劇性を拭えない。
が、そんなことはこの際どうでも良い。
ひとりの男の恋の在り方に観客は打ちのめされるのだから。
窓を介しての「見つめる」「見られる」この繰り返されるシーンがどきどきしながらも、美しかった。ブラームスの静かな音色にのせて、冷たい空気感の中に身を置く男、あるいは女の悲しみが美しかった。
ルコント作品、やはり良いです。(3.8点)
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