「本当に希にみる名作中の名作だと思います」静かなる決闘 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
本当に希にみる名作中の名作だと思います
感動しました
名作中の名作です
医療行為中に梅毒に感染してしまった医師を巡る物語です
そうであると同時に戦後の日本の立ち直りこそを実はテーマとしているのです
婚約者の美佐緒は戦前の平和な社会
見習い看護婦の峰岸は戦後のやさぐれた社会
梅毒は軍国主義をそれぞれ象徴しています
軍国主義に感化され戦争に邁進した日本人が戦後どう生きて行くべきかを描いているのです
それが本当のテーマなのです
戦前の日本への郷愁は捨て去るしかなく、軍国主義という梅毒を克服して、戦後の荒廃の中から日本人は希望を捨てずマイナスから立ち直っていくほか無いのです
本当になにもかもこれからですよ
人間うつむいて歩いては駄目ですよ
ちゃんと胸を張って上を向いて‥…
峰岸看護婦の終盤の言葉こそ、黒澤監督からの日本人へのメッセージだと思います
本当に希にみる名作中の名作だと思います
雨は登場人物が奈落の底に墜ちるときに降っています
美佐緒が最後のお別れをして去るときは雨ではなく、さらに冷たく雪になっているのです
彼女が別れ際に机に置いていったものはラストシーンの手前で水仙の小さな鉢植えだったことが明らかにされます
水仙の花言葉は「もう一度愛してほしい」なのです
峰岸看護婦の赤ちゃんはお腹が大きくなるのも、産まれてからもその姿も見せません
泣き声すら聞かせません
赤ちゃんが初めて画面に登場するのは中田の妻が現実を知った時です
計算された絶妙のタイミングで巨大なほどのアップで登場し、さらに大きな声で泣くのです
そして終盤に志村喬演ずる大先生があやしているシーン、赤ちゃんが登場するのはその二つだけなのです
お前のおっかさんも一人前になったぞと、警官が赤ちゃんに声を掛けるのです
ラストシーンは藤崎医師も峰岸看護婦も最早迷いもなく新しい社会を建設していくプロフェッショナルとして全力を持って懸命に邁進しているシーンで終わるのです
そのシーンには患者の手術前の家族の為に絶対に直してくれと懇願する声が被せられているのです
医師も看護婦も患者も、手術室の全員が力を合わせて大病を克服していくシーンなのです
戦後すぐの日本に必要なことはこの姿なのです
なんと言う見事な演出でしょうか
感嘆するばかりです
2つの丁寧なコメントを頂き、大変恐縮いたしております。本当にありがとうございました。
私は、映画鑑賞は、読書なども同じかも知れませんが、配信者と受け手の戦いとも思っています。いかに制作者側の意図を読み取れるか、更に言えば、その意図以上に己に価値ある教訓を感じ取れるかの対峙の場面でもあるかと思っています。
そんな意味でも、未熟な私としては、今後の映画鑑賞の際の、あき240様のレビューは新たな気付きへの指針として楽しみになりました。何かと一方的になってしまうかと思いますが、今後共、
映画.com上でのお付き合いのほど宜しくお願いいたします。
KENZO一級建築士事務所さま
共感とコメントありがとうございます
励みになります
すみません
単なる「読み」でしかありません
自分には映像からはそう読み取れただけです
断定的に書いていますが、単なる一個人の思い込みに過ぎません
あき240様へ
いつも貴重な御意見を拝見させていただいております。
さてこの度の「静かなる決闘」への、鋭い時代との比喩的考察に大変驚いております。もし御支障ございませんようでしたら、これは何らかの制作者側の資料で知り得たことなのか、あくまでも
あき240様の“読み”なのか、教えていただけましたら幸いです。