「現代のおとぎ話」シザーハンズ エルさんの映画レビュー(感想・評価)
現代のおとぎ話
時は中世ヨーロッパ、場所は雪深い王国。
その国の人里離れた森の奥には丘に立派なお城があり、
そこには手がハサミで出来た、人とは相容れない人造人間が暮らしていた。
ふとした拍子にある女性がその城に迷い込み二人は惹かれ合い、そして……
――という美女と野獣ストーリー想像してました。
これ現代劇だったんですね!?
というところにまず驚くやら我ながら勝手なイメージに笑うやら。
ただ前段のイメージもそこまでおかしかったわけではなく
ハサミ男ことエドワードが暮らしていたのは人里離れたお城なのは事実、
そんな「おとぎ話の住人」を「現代」のパステルカラーが眩しい住宅街にお招きする。
そういう意味合いも込められているのだろう。
見る前はもっと悲劇的で切なくてちょっと哲学チックな話を想像していたが、
実際に見てみると人造人間が現代のとある一家の家に居候。
ママさんやパパさん、チビッコの男の子と仲良くなりつつ
田舎町はみんな彼に注目、そんな中で彼が起こす大☆騒☆動に街は大騒ぎ!
植木をチョキチョキやったり、テレビにまで出演してみたり、
みんなにも受け入れられてニッコリ♪
……ってこれ、そんなオバQみたいな話だったの!? と更にビックリ。
社会というものを知らない純粋すぎるエドワードは
自分の気持ちを表情にするのも言葉にするのも苦手だが、
だからこそひとつひとつの所作が非常にキュート。
好意を向けられれば好意で返し、敵意を向けられれば怒る、子供そのものだ。
そんな彼が、正体不明の隣人として、社会で生きるのはあまりに困難だった。
終盤にやはり相容れないのだとお互いに理解しあい別れが来るが、
これがあまりに切ない。
こいつのせいで上手くいかなかったのだと糾弾出来る悪い奴はいるが、
そんな奴は世の中にたくさんいる以上、どうしたって人の中で暮らすのは難しかったのだ。
「大衆の無責任な好奇心」も「異質なものへの恐怖」も社会から切り離せないのだから。
結局、それぞれの暮らしていた環境、
「中世ヨーロッパ風のお城」と「パステルカラーの住宅街」が示す通り、
暮らす世界の違いがお互いの断絶を悲しく表現してしまっている。
最後に語られる雪の降る理由だが、
これも事前にうっすら聞いていて私はてっきりエドワードの悲しみが雪を揺らすのだと思っていた。
だが実際は、きっと彼はあの夜、氷の彫像を作った時の彼女の喜んだ顔が忘れられないのだと思った。
今も喜んで欲しくて雪を降らす、それだけではないだろうか。
切なくて、残酷で、とても美しい愛の物語だ。
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