「Love Letterや花とアリスを観て岩井俊二監督が好きになった方ならきっと気に入って頂けると思います」四月物語 あき240さんの映画レビュー(感想・評価)
Love Letterや花とアリスを観て岩井俊二監督が好きになった方ならきっと気に入って頂けると思います
四月物語
1998年公開
正に四月物語
大学入学で北海道から上京してきた女性の四月の日々をスケッチした映画です
ストーリーはあるような無いようなものです
Love Letterや花とアリスを観て岩井俊二監督が好きになった方ならきっと気に入って頂けると思います
主人公はもちろん、当時21歳の松たか子が演じる女子大生です
でも本当の主役は四月でした
四月の温かく柔らかな陽光
涼やかに吹く薫風、ほんの少しの湿気や日陰の冷たさ
雨の温かさ
そういった空気が映像の中に閉じ込められてあります
新年度、新しい学校、職場、環境、土地、部屋、人間関係
不安と期待と精一杯の背伸びと緊張もまた
遠い遠い昔のことになったのに昨日のことのように思い出させてくれるように、フィルムに写し撮られているのです
撮影監督はLove Letterと同じ篠田昇さん
2004年にお亡くなりになられていたことを知りました
大変に残念なことです
そして今さらながら、気づいたことがありました
本作に写されていた主人公始め新入生は2002年卒業であったはずということに
2002年は、就職氷河期の中でも特に就職状況が悪く、就職率が55.1%と最も低かった年です
全員が就職氷河期世代だったという事に気付いたのです
こんなに暖かな日差しが降り注いでいたのに、4年後、彼等、彼女達は氷河期の氷に閉じ込められて氷雪に遭難する運命だということに気付いてしまったのです
それから一世代分の年月が過ぎ去り、それからどうなったかを私達はすべて知っているのです
主人公やその憧れの先輩のその後の人生がどうなったであろうかもだいたいのところまで推測できてしまうのです
遠い、遠いところに来てしまったという胸の張り裂けるような思いと深い感慨に浸ってしまいました
そうして、また夏が過ぎ去り秋が来て冬が終われば、来年も四月が訪れるのです
30年近く経とうとも、おなじような四月物語がまたあるのでしょう
折れた傘を返しに行く物語も
訳の分からない大昔の映画を背伸びして観る物語も