フォッグ・オブ・ウォー マクナマラ元米国防長官の告白 : 映画評論・批評

2004年9月1日更新

2004年9月11日よりヴァージンシネマズ六本木ヒルズにてロードショー

彼が信じる類の知性を批判する手続きをこそ

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注意しろ、この映画で描かれるほどブッシュはバカじゃない、と「華氏911」についてゴダールは発言した。そう、マイケル・ムーアの狙いが、ブッシュをバカにすることだけなら、彼は成功した。だけど実際に僕らが恐れるのは、そんなバカな奴が大統領に再選される可能性の高さにある。ブッシュはバカだが、それでも彼でいいのだ、といった居直りこそが恐ろしい。だとすれば、ブッシュがバカだと言い募る「華氏911」は、政治家はバカでもいい、といったシニックな立場の蔓延=政治危機に対してあまり有効じゃないだろう。

本作の主人公で若くしてケネディに抜擢された元キレ者国防長官マクナマラは、引退した今もバカに見えず、自分の仕事を明晰かつ雄弁に振り返るし、作品としてもムーア作品よりずっと端整なドキュメンタリーに仕上がっている。ただ“敵の身になって考えろ”“効率を最大限に高めよ”といった彼の言い分を聞くと、まるでベストセラーになるタイプのビジネスマン用“成功に向けての教訓本”だなあ、と僕には思える。

本作に見所があるとすれば、(バカにすることなく)マクナマラ自身の口で多くを語らせ、そのことで彼が信じる類いの“知性”について観客に疑問を呼び起こし、批判する手続きにおいてなのだ。

北小路隆志

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