「シュレイダー兄弟の親日映画」ザ・ヤクザ たぁ〜ちぃんさんの映画レビュー(感想・評価)
シュレイダー兄弟の親日映画
やくざに人質にとられた旧友の娘を救うため、ハリーは日本へ行き、かつて進駐軍時代に愛した英子の兄の田中健にやくざとの仲介を頼む。
田中は、英子を米兵の暴力から救ってくれたハリーに恩があり、義理のために協力する。
原作はレナード・シュレイダー、脚本はポール・シュレイダーのやくざ映画大好き兄弟。
少なくとも5年日本に滞在していたレナードのほうは、本作で描かれる仁侠道が既に失われつつある事を知った上で執筆していたでしょう。
外国人として、日本の美徳である義理と人情に憧れを持ってヤクザに投影させたと思います。
本作のテーマである[義理]を描いた象徴的なセリフが、主人公ハリーの護衛として日本についてきたダスティと、高倉健演じる田中健とのやりとり。
「健さん。義理とは借りなのか?」
『重荷です。耐え難いほどの重荷』
「じゃあ放り出せばどうなんだ!?文句は言われまい。天罰でもくだるのか?」
『いいえ』
「じゃあなぜ重荷を背負う?」
『義理です』
その瞬間のダスティのポカーンとした顔と、アメリカの観客は同じ顔をしていたに違いない(笑)
自分のせいで田中の過去と未来をぶち壊したハリーが、やくざでも無いのに指を詰めて詫びを入れるのも理解できないだろうなぁ。
実は田中は英子の夫なのだが、戦地に6年間抑留されてた時に英子とハリーが愛し合い、英子が救われていた恩もあり、その事を隠して兄として距離を置いてた。というディープな設定といい、健さんがひたすら格好良く、クライマックスのかちこみでも、主役であるはずのロバート・ミッチャムが完全に脇にまわってしまうという、アメリカでコケたのもある意味納得の、「ウルヴァリン:SAMURAI」とは大違いな親日映画です。