「変態的SFホラー映画の問題作」ザ・フライ 阿久津竜斗さんの映画レビュー(感想・評価)
変態的SFホラー映画の問題作
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気持ち悪い。とにかく気持ち悪い。
普通はそれは評価を下げるものとなるはずなのに、この映画ではそうならないのです。
逆にその「気持ち悪さ」こそが、今作の一番の魅力なのかもしれません。
「巨大な幼虫を妊娠する」とか、「ゲロをぶっかけられ、皮膚がドロドロに溶ける」などの胸糞的表現が多く、でもそれが不思議と〝クセ〟になる。それがデヴィッド・クローネンバーグ映画の真の恐ろしさなのかもしれません。
そして、最後には悲惨なセスとヴェロニカの別れが待っています。それが『猿の惑星』を彷彿とさせるような、「バットエンドなんだけど、どこか胸糞とも言えない」感を生み出しているとも感じました。
それから登場人物も少なくて、スッと物語に入り込めるのも今作の魅力です。
二日は引きずるような後味を残す映画であるものの、間違いなくモンスター映画の中でも重要度の高い名作だと思います。
【個人的キーワード】
「昆虫に、政治理念はないのさ。奴らは残忍で、同情を知らなきゃ、歩み寄りも知らない。……昆虫を信頼してはいけないんだ。……僕は昆虫の、政治家の第一号になりたい。なれればだけど、でも……僕、今とても怖いんだ……」
───セス・ブランドル
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