「かくも弱き人々」ドッグヴィル ミカさんの映画レビュー(感想・評価)
かくも弱き人々
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ドッグヴィルという小さな村が、「人類の持つ暴力性」の象徴になっていて、人間の持つダークな部分が普遍的にも極端に描かれた傑作です。
村人の言うことを何でも受け入れる主人公グレースは、慈愛の象徴になっていますが、その慈愛に甘んじて村人達は徐々にその牙をグレースに向け始めます。お願いごとだけから始まったことが次第に虐待にまでエスカレートしていく残虐性は、閉鎖的な人間の集団の中ではもはや止めることはできません。
そして、村人が人間の残酷性の象徴だとしたら、トムは観念的な偽善の象徴でしょう。
どんなに綺麗ごとを言っても、本能の前ではそれは無力である。だからこそ、首輪をはめ時にはムチを与えるしかない。慈愛だけでは、自分の行動に責任をとる機会が与えられず人類は犬(本能)のままである。現代では首輪やムチの代替物が、宗教や法律や倫理に変わっただけなのかもしれません。
個人的には、犬になる様な社会を作りだしたらいかん!と思います。人間である以上、犬になる前に何らかの策が出せる可能性があると信じているからです。しかしトリアーには、こんな綺麗ごとは通じません。私もトムと同じ偽善者なのか?こういう人間でありたいという夢もただの寝言でしかないのか?
トリアー!!!!!
なんてこったい。
かくも弱き人々となった村人達に与えられたムチに快感を覚えた私も、グレースを虐待した村人と全く同じ人種だということに気づかされる人間の性を的確に暴いた恐ろしい作品でした。
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