劇場公開日 2003年4月26日

D.I. : 映画評論・批評

2003年4月1日更新

2003年4月26日よりユーロスペースほかにてロードショー

笑いこそが最大の武器となるのだ

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目には目を歯には歯を……という報復の原理は、世界最古のハムラビ法典にすでに書かれ、人間の心理に深く根を下ろした原則である……と子どもの頃に習った気がするけど、現在のアメリカ合衆国を牛耳るネオコン(新保守主義)たちを悪ノリさせたのも、01年9月11日の出来事だった。それまで潜在的に主張されてきた極右的な政策が、あの日以降、一部の反対を押し切りつつ国の総意として浮上したのだ。目には目を、やられたらやりかえせ……と。

パレスチナ映画(フランス合作)「D.I.」を見る。やはりここでも古代から延々と続く「目には目を歯には歯を」の終わりなき応酬が、しかしオフビートなギャグ感覚で描かれる。たとえば、毎朝ゴミ袋を隣家に投げ込むオジサンがいて、ついにある日、それらのゴミ袋がまるごと隣家から投げ返される。すると、オジサンは真顔で「恥を知れ!」と怒鳴る……といった具合に。決してマジメなお勉強の材料として見るべき映画ではない。ただ、こうしたオフビート・コメディをあえてパレスチナの地で撮影する作者の意図は明らかだろう。

この世界の悲喜劇性や人間の愚かさに対し、僕たちはもはや笑うしかない? いや、それでは不充分だ。最近ではマイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン」が効果的に実践したように、笑いこそが劣性にある立場の者にとって最大の批評の武器となるのだ。

北小路隆志

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