「山紫水明への旅」山中傳奇 よしたださんの映画レビュー(感想・評価)
山紫水明への旅
この5月、新宿の映画館の台湾巨匠傑作選で予告編を何度も観て、非常に楽しみにしていた作品。季節はすでに初冬である。半年間に随分と期待が膨らんだ分、観客側のハードルが高くなった。
キン・フー監督の作品は初めてだ。ホラー、ファンタジー、アクション、ロマンス、サスペンスが全て詰まった娯楽大作である。ワイヤーアクション、火薬、逆回転など素朴な技術を多用し、摩訶不思議な世界を現出させている。
3時間半の上映時間は少し長すぎる気もしたが、インターネットはおろか、テレビですら一般家庭に普及していなかった時代の映画の役割を考えると理解できないことはない。当時の観客は、メディアで外の世界を見聞きしたり、観光旅行に出かけることが珍しかったのだから、主人公の旅路を多様なロケで描写することで長くなってしまうことはサービスだったのだろう。観客は山紫水明の世界への旅に誘われる。
オム・マニ・ペメ・フムというチベット仏教のマントラがたびたび唱えられているが、先日の東京フィルメックスで観た「轢き殺された羊」でも登場人物が口にしていた。最も一般的なマントラということらしい。ペメのアルファベットつづりはPadme、つまり、アナキンの嫁さん、ルークとレイアの母親の名だ。
旅する主人公が背負う四角いリュックみたいなの。しかも、小さな屋根まで付いている。チャイニーズゴーストストーリーでレスリー・チャンが背負っていたのも、この作品の影響か、それとも中国の時代劇では定番の小道具なのだろうか。
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