「今更、南北戦争?」サンセット大通り マサシさんの映画レビュー(感想・評価)
今更、南北戦争?
『映画は俳優だけで見せているのではない』と言う台詞があったが、どの場面だったか?
でも、それに共感する。映画を鑑賞する者に俳優の演技力なんか分かるはずもない。分かるとすれば、歌がうまく歌えるとか、踊りのキレが良いとかだろう。
パラマウントが『風と共に去りぬ』を選ばなかったのは『今更、南北戦争?』って凄く共感する。『MGM』も『パラマウント』もユダヤ系の会社であろうが、より多くのユダヤ系アメリカ人が活躍していたパラマウントでは、ナチス・ドイツへのレジスタンスでこう言ったアイロニーに満ちたセリフができたと思う。
パラマウントのオーナー(?)が金がない事を嘆くが、時代が遡るこの20年はそれでアメリカンドリームを藻屑にした者が沢山いた。最近の『バビロン』と言う映画にも描かれていると思う。
芸能界は群雄割拠な場所だ。映画賞をとっても、翌年には服役しているような者もいたと思う。つまり、尋常ではないお金が動く世界なのだろう。そう言う意味では日本もそうなのだろうが、日本は過去の行いや門地を問わない民主的でクールな業界なのだ。アイドルだった人が綺麗なおばあちゃんを演ずる事が出来る。見る者も作る者も、フトコロの深い人達が大変に多い。
ガキの頃 年末年始の特番とかで見た可能性があるが、ガキだったので、理解できるわけもなく。こう言ったストーリーは火曜サスペンス劇場を初め、色々な別のストーリーとして取り上げられている。だから、初見かもしれない。そう言えば、刑事コロンボにも全く同じストーリーがあった。
追記
この屋敷に出て来る駐車車庫は『サブリナ』の駐車車庫?
追追記
最初に戻るが映画は『俳優ばかりで。。』って、この映画はある意味アイロニーなんだと思った。監督が二人も出演し、無声映画役者が多数出てセリフを喋り、おまけに演じた監督はアカデミーまでとっている様だ。
マサシさんのレビューは、私の考えが及ばない視点で論理立てていて、何時も驚いています。
ワイルダー監督のこのハリウッド暴露のバックステージ映画は、アメリカ映画のサイレントからトーキーへの時代変化をふたりの主役で残酷に描いた傑作でした。アメリカ映画は常に興行の為の時代の先取りを優先すると同時に過去の事には無頓着なところがあります。映画愛が強く裏事情を知り尽くしているワイルダー監督が、サイレントの映画人を再びスクリーンに登場させた意図には、そんな興行優先に対するアンチテーゼもあったと思います。しかも単に懐かしむのではなく、アイロニーに満ちた内容が凄い。この暗さもワイルダーの個性ですね。
パラマウント映画については、創設者のひとりであるアドルフ・ズーカー(アドルフ・ズコール)が有名ですね。ハンガリーのユダヤ系の貧しい家庭出身で、アメリカに移住してから立身出世したアメリカンドリームそのものの人です。この映画の少し後にハリウッドに行った淀川長治さんが80代のズーカーに面会したエピソードがあります。昔の映画のスターや監督の名前をすらすら話す淀川さんの博識に驚いだスタッフが会長のズーカーに会わせてくれたのです。スタッフが恐る恐る紹介するとズーカーは形だけの挨拶を返したのですが、そこで淀川さんはパラマウント映画の最初期のキャッチフレーズを知っていると聴かせたら、ズーカーの態度が一変したと言います。今この会社にその言葉を知っている者は私意外に誰もいないと。
過去を古いだけの価値観で忘れ去るのは仕方ないですが、今に繋がる功績は時に想い出さないと良いものは作れないと、私は思います。