39 刑法第三十九条のレビュー・感想・評価
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人間の心の不思議
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多重人格障害は、実在する病気だ。
多くは子供時代の虐待、特に性的虐待で発症し、辛い記憶を複数の人格に切り分けて本能的に自己防衛をした結果なのだという。
本作の結論は、精神障害があれば刑事責任を問わないという規定の是非について問う、という内容に落ち着いてしまった。
しかし、人の心が持つ奥深さ、不思議さをこの作品は良く描いていると思う。
妹を殺された日から、彼は精神的外傷を負っていた。39条が、その精神状態の異常さに拍車をかけたのは間違いない。
彼は39条の理不尽さを説きながら、自身も39条を利用するかのように振る舞った。
彼の行為も充分異常である。
その彼に、39条の理不尽さを代弁させるというパラドクスと見ると、なんと深い話なのだろうと思った。
精神鑑定師が2人とも精神薄弱に見えるのも興味深い。
結局は主観に過ぎない精神鑑定を、世間的に見ればかなり精神の弱そうな人が行なっていることで、精神鑑定の不確実を強調しようとしたと見るべきか?
いや、私はこのように見たい。結局は法の裁きだって、裁く側の人間の過去をも反映した、ものすごく主観的なものに過ぎないのではないか、という問題提起なのだと。
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