「中盤から段々面白くなる」キャスト・アウェイ shosho5656さんの映画レビュー(感想・評価)
中盤から段々面白くなる
この作品は主人公が自殺を思いとどまってから、途端に面白くなる。
生きることに対して前向きになる姿勢からは純粋な美しさすら感じる。
ただ人間が社会生物が故の苦悩も描く。人間は一人では生きていけない。
話し喜びを分かち合う他人がいなければ心が持たないだろう。
それを解決するために主人公が生み出したのがウィルソンという存在だ。
ただしウィルソンは人ではない。バレーボールに顔を描いてウィルソンと名付け、心の支えにした。
初めはひどく滑稽に思えたが物語が進むにつれて無くてはならない心の拠り所なのだと感じた。トムハンクス扮する主人公の演技も迫真のもので、物言わぬウィルソンに真剣に語りかける。道端で見かける精神の均衡が狂った人も同様の迫力があるがそれ以上かもしれない。
印象に残ったシーンがある。
辛く長い生活の中でイライラのあまりウィルソンを蹴飛ばしてしまう。ウィルソンは寝ぐらにしている洞窟の窓穴から落っこちて何処かへいってしまう。すぐに唯一の友人にしてしまった仕打ちに気づき、必死で探しに行く。
捜索の末、波打ち際にウィルソンを見つけることができた時の喜びようといったら、まるで生き別れの兄弟にでも会ったかのような様であり、狂気すら感じる。しかし、特殊な環境状況が、それを正当化する。
もう一つ印象深いシーンがある。救出後の帰還祝賀パーティがお開きになった後、主人公は会場に一人残る。簡単に食べ物が残され、簡単に火を付けることができる道具が存在することに対して複雑な表情を浮かべる。まるで、無人島生活の数年は何だったんだろうか。といったやるせなさである。本人にとっては生きるか死ぬかのサバイバルだったが、平和な生活をしている一般人からすれば与り知らぬ所だったということを暗に象徴していたシーンだったと思う。本当に大変だと感じていたのは当事者なのだ。それはかっての恋人を含む。
個人的にそこの処理は綺麗でよかったと思う。愛に生きて、大人としての責任感を放棄するのはやはり横恋慕であろう。
ターミナルでもそうだが、報われない恋をする役がトムハンクスには良く似合う。そしてそれが又格好いいのだ。