劇場公開日 2023年7月28日

さらば、わが愛 覇王別姫のレビュー・感想・評価

全90件中、61~80件目を表示

5.0覇王別姫、別格!

2023年7月29日
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鑑賞方法:映画館

傑作すぎて、もはや言葉で語るものではない。
素晴らしすぎて、人が作り出したとはとても思えない。
名作はたぶん偶然、生まれるんだと思う。どんな人材、材料がそろっても歴史に名を残す作品はなかなか生まれない。奇跡的に何かのピースがはまった時に名画が生まれる。
劇場を夢見心地で出た。

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ドラゴンミズホ

5.0何度見ても傑作で、スクリーンで見て打ち震えてしまった。個人的にかな...

2023年7月29日
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鑑賞方法:映画館

何度見ても傑作で、スクリーンで見て打ち震えてしまった。個人的にかなり納得行ったのは、男が男に惚れる理由。凡百ある「だってゲイなんだモーン」映画とは格が違う。美しさ、芸術性、歴史描写、全て完全。

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kazuyuki

4.0タイトルなし

2023年7月29日
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鑑賞方法:映画館

つらくて何も考えられなくなるな。
こういう映画が中国でちゃんと作られているというのがすごいのよ。
文楽のこととか思い出してしんどくなっちゃったな。

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ouosou

4.0まだそこに生きている

2023年2月14日
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チェン・カイコーは歴史を憎まない。それを谷間を抜ける風や浜辺に寄せるさざ波のように、自然的なものとして受け入れる。たとえそれが屋根を吹き飛ばし大地を抉るほど強大で残酷なものであっても。

彼の人生は、有り体に言えば波瀾万丈だ。映画監督の父の家に生まれ、経済的にも文化的にも恵まれた幼少期を過ごすが、反右派闘争や文化大革命の過激化に伴い次第に凋落。反共的で穏健派の父親に失望し、遂には自ら紅衛兵となる。文化大革命末期には雲南省の山奥に下放され、そこで幾年もの間過酷な農作業に従事する。毛沢東主義が下火になると北京へ戻り、北京電影学院で中国映画第5世代もう一人の英雄、チャン・イーモウと出会う。彼と組んだ『黄色い大地』は国外批評で大成功を収め、以降チェン・カイコーは(そしてチャン・イーモウも)中国屈指の名監督へと成り上がっていく。センシティブな主題を取り上げることも多い彼が中国国内で日の目を見ることができたことには、当時の中国が文化大革命と天安門事件の間の政治的に凪の時代だったことも大いに関係している。ちなみにこのあたりの話は彼の自伝『私の紅衛兵時代(講談社現代新書)』に詳しい。

さて、このように彼は歴史に散々振り回されてきたわけだが、「政治が悪い」「国が悪い」といった論調からは慎重に距離を置く。もちろんそれは中国共産党の主導する現代中国の政治体制に賛同することを意味しない。そうではなく、彼は主語を肥大化させることで問題が政治・社会批判の次元に抽象化されてしまうことを危惧している。彼が描きたいのは、歴史のダイナミズムにひたすら耐え続ける個々人の尊厳なのだ。

レスリー・チャン演じる蝶衣は京劇『覇王別姫』の虞美人役を務める女形役者。相手役の項羽を務めるのは小さい頃から兄貴分の小楼。幾度となく修行と公演を重ねるうちに、蝶衣は次第に小楼のことが好きになっていく。彼が虞美人という役柄に入り込み過ぎてしまったがゆえの恋慕か、それとも単なる同性愛か、そのあたりはよくわからない。重要なのは、男が男を好きになってしまったという客観的事実だ。中国は今なお同性愛に厳しく、そうしたテーマの文芸作品は基本的に製作を禁じられている。ましてや日清戦争から文化大革命の時代にそうした「自由主義的思想」を持つことは国賊の謗りを免れ得なかったに違いない。蝶衣の感じた孤独や閉塞感は計り知れない。

また、彼らが演じる京劇という文芸も、時代の変遷に伴い徐々にその足場を狭めていく。映画冒頭、1920年代においては「いまだかつてこれほど隆盛を極めたことはない」と言われていた京劇は、文化大革命の折には反共的なブルジョワ趣味と見なされ、大衆に顧みられなくなる。蝶衣と小楼が紅衛兵率いる群衆の前で総括を迫られるシーンは胸が締め付けられる。小楼は蝶衣を裏切り、彼の日中戦争時代の親日的態度や阿片中毒に陥った過去を暴露する。追い詰められた蝶衣は小楼に向かって反撃に出るかと思いきや、なぜか小楼の妻、菊仙の悪辣を大声で暴き立てはじめる。そのさまはほとんど八つ当たりに近い。

思えば蝶衣と小楼の蜜月関係にヒビを入れたのは他ならぬ菊仙だ。もちろん彼女に悪意があったわけではない。小楼と菊仙はただ運命の導きによって惹かれ合ったに過ぎない。しかし蝶衣にとっては残酷すぎる日々だった。最愛の彼を女郎屋の女に取られ、しかも彼もまた彼女を愛している。

同性愛嫌悪、京劇の衰退、そして愛の否定。蝶衣は歴史がもたらすさまざまな不条理に押し潰され、遂には壊れてしまった。ゆえに彼は舞台上での凜として美麗な立ち振る舞いとは真逆の、八つ当たり的な絶叫に及ぶ。「その女を殺せ!」

波乱の文化大革命は終了を迎え、中国にひとときの平和が戻るが、けっきょく蝶衣は自ら命を絶ってしまう。冒頭のタイトルカットの背景が自刃する虞美人だったことを思い返せば、彼の自殺は予め運命づけられたものであるといえる。

しかし我々には、彼がただ単に歴史に翻弄され、弱々しく蹲りながら絶命していったようには到底思えない。やはり思い出されるのは、舞台で舞い踊る蝶衣の凛と透き通った、それでいて芯のあるふたつの眼だ。その双眸は京劇という枠を超越し、今や映画史に深く刻み込まれた。

彼はまだそこに生きている。

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因果

4.5美しい映画

2022年10月9日
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泣ける

悲しい

久しぶりに鑑賞しました。

中国の激動の時代を生きた京劇役者の話です。幼少期〜壮年期?までを描いた3時間ほどの映画ですが、まったく長さを感じさせません。

静かなシーンが多いですが、その映像や役者の細かい表情が台詞だけではない感情、退廃美を感じさせます。京劇のシーンでは一変、あの独特の音楽が大音量で流れ、それもまたいい‼︎
華やかな京劇の世界と、現実のギャップを思い知らされます。

蝶衣の小楼、演じる京劇への執着と愛、京劇のなかでしか生きていけない姿、決していい方向へ向くことはない人生を生きる姿は、美しく魅力的です。

話の途中まで、あまりいい印象のない菊仙でしたが、恋敵である蝶衣が阿片におぼれた際の献身的な姿、弟子に自分の役を取られてしまった蝶衣を思いやるような表情…言葉ではいい表せられない関係ですね。同じ人を愛した者同士憎しみもあるのですが、だからこそ、蝶衣をよく見て弱さを分かっているのは菊仙なのかなと思います。

今年6月頃に日本での上映権が終了したようで、映画館で観ることができず残念ですが、これからも観たいと思う映画です。

<追記>
4K上映されていたため映画館で鑑賞。
待ってました、映画館上映‼︎
自宅のテレビで観るより作品に没入できたことと、自分自身、中国近代史について少し知識がつき、以前観た時よりも時代背景を理解できたので、新鮮な気持ちで鑑賞しました。

映像が鮮明になったことで、これまで気づけていなかった演出があっことがショックでした。
大人になった蝶衣の化粧前に、子供の頃、指を隠すために使っていた手袋?が置いてあること等…
それに気づいた後に阿片を抜こうともがく蝶衣が母親を恋しがる姿を見ると、つらかったです。

そして、レスリーチャン美しすぎる。
普遍的ですね。
あのなで肩で衣装を着るとより女性的な体型に見えます。
この美しさは女性では出せませんね。
大きなスクリーンで拝むことができて、幸せでした。

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きい

5.0恐るべき傑作 映画史上屈指の名作だと思います 「ラストエンペラー」より数段は上です

2022年8月2日
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鑑賞方法:DVD/BD

物語は1924年から、1977年頃までの50年以上もの中国の物語
冒頭の体育館のようなところのシーンが1977年のこと

22年前とは1956年頃の「百花斉放・百家争鳴」という、知識人が共産党の政策を批判することを毛沢東が奨励した頃のこと
結局「百花斉放・百家争鳴」は罠で、批判した55万人もの人々は「反右派闘争」によって全て追放されています
現代劇について主人公が意見を述べるシーンはそれを表現しています

11年前とは1966年の文化大革命のこと

11年後の1977年に四人組が失脚して文化大革命が終結して、京劇も踊れる世の中になり、二人はまたコンビを組もうとしていたようです

四人組とは文化大革命を主導した、中国共産党の幹部4名のこと

江青(中国共産党中央政治局委員、中央文革小組副組長、毛沢東夫人)
張春橋(国務院副総理、党中央政治局常務委員)
姚文元(党中央政治局委員)
王洪文(党副主席)

文化大革命については、劇中にあるとおりの凄まじい政治的ヒステリーで、決して誇張されていません
筆舌に尽くし難いことが本当にあったのです

ラストシーンの1977年は、主人公の蝶衣と小楼はそれぞれもう60代のはず

それ故に美しい姿のままで記憶の中に生きようとしたのだと理解しました

2022年8月3日
米国の下院議長が台湾に政府専用機で降り立ち、台湾の総統に面会したという大ニュースが流れています

二つの中国、大陸と台湾

中国はひとつだと中国共産党は怒り心頭で今にも戦争を起こしそうな雲行きです

大陸と台湾、なぜこうなったのかも本作の物語の背景として描かれます

台湾、正式には中華民国
中国の長い長い数千年の歴史初めての民主主義共和国
美しい理想

しかし中華民国は大陸の内戦に敗れ台湾に逃れてきたのです
確かに第二次大戦頃の中華民国政権は腐敗していたようです
しかし中国の民主主義共和国なのです

大陸は中国共産党が支配しています
皇帝のように一人の人物が君臨して人民を支配しているのです

ラストシーンのテロップにこうでます
「1990年北京では、京劇一座北京入城200周年を記念する祝賀上演が行われた」と

1990年は天安門事件があった翌年です

大陸と台湾
どちらが本当の中国なのでしょうか?
まるで蝶衣と小四です

蝶衣が、小四に主役の座を追われたシーンは1971年に台湾が国連から脱退させられたことを思いださせます

劇中劇の覇王別姫の物語
クライマックスは四面楚歌となり、残ったのは、一頭の馬と一人の女のみ
もはやこれまでと、馬を逃がそうとしたが馬は動こうとせず
愛姫も王のそばにとどまった
愛姫は王に酒を注ぎ剣を手に王の為に最期の舞を舞ってそのまま我が喉を突き王への貞節を全うした

京劇一座の師匠はこう言います
「この物語は我々になにを教えているか
人はそれぞれの運命に責任を負わねばならぬということだ」

蝶衣は老いて醜くなり、そして舞も出来なくなる自分の運命を受け入れたのだと思います
責任を負うとは、彼にはこういう事であったのです

そして大陸と台湾
四面楚歌なのは台湾?
それとも中国共産党?

運命に責任を負わねばならないのはどちらなのでしょうか?

「かっては絶大の権勢を誇った楚王
如何なる英雄といえども定められた運命にはさからえないのだ」

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あき240

4.020年ぶり?

2022年6月23日
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21年ぶり?いや22年ぶりか。

子供のころはよくわからなかったが、蝶衣と菊仙の愛憎がすごかった。小楼かすむ。なんだかんだ菊仙と小楼が長年連れ添っていたのが意外。菊仙はすごく小楼のために動いてるし。しかしあの裏切り…。恋敵として憎まれ役だけど、強かさと優しさと哀しさをコンリーがうまく演じていたと思う。あとはレスリーチャンの美しさ。身のこなし。

鏡越しの視線、赤などモチーフに注目してもう一度みたい。

93年当時、今の中国みたいになるとは思わなかったな。前半の子供たちの過酷な暮らしが現代で見ると殊更きつい。

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hyvaayota26

4.5大作で名作

2022年6月19日
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映画好きな方や海外では有名なのかもしれないけど、私は全然知らなかった作品。

壮大な歴史物で、恋愛映画でもあり、
今でいうLGBTもじっくり描かれた内容。

普遍性のある大作で名作です。

映画を漁り始めて少し経つと、
好きなジャンルで知らない大作なんて
まだあるんだろうかとか思い始めるけど、
まだまだあったなあ。

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もりり

5.0霸王别姬胶片版东京重映,去看了。我买的位置不好,第一排中间偏右,两...

2022年6月10日
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霸王别姬胶片版东京重映,去看了。我买的位置不好,第一排中间偏右,两小时40分钟感觉脖子要断。但是正因如此才如此近距离的欣赏到这部影片,胶片的每一处划痕,镜头的每一次抖动,每一处光影交错都看得清清楚楚。电影本身看过很多次,已经很难再有新的想法,唯有小赖子自杀时,扑面而来的尘土,让我揪心。另外我旁边坐了两个日本辣妹,剧终鼓掌的时候,她俩都惊了,不知道看懂了没。

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Kevin Wang

5.0切なくてやり切れない

2022年5月31日
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ずっとずっと昔に見たけど、見た時の切なさとやり切れなさは今でも記憶の隅に残っている。

信頼していた人の裏切りとそれによる絶望感。

レスリーチャンがとにかく可哀想で仕方がない。

見たらまた胸が潰されそうになりそうだけど、何十年ぶりかにまた見てみようと思う。

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ただの映画好き

4.0レスリー・チャン

2022年4月22日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 「男として生まれ」なのか、「女として生まれ」なのかわからなくなってきた(笑)。しかし、これだけ長時間の映画なのに時間を感じさせないくらいに京劇に魅入ってしまうという一大叙事詩なのだ。日本の占領、国民党、共産党と時代が変わる中で、芝居の中で生き続ける二人。中国近代史の勉強にもなる。

 文化大革命の後は、台詞さえも変えられてしまったのかな?よくわからないが。

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kossy

4.0レスリー・チャンその人と重なって

2021年9月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

京劇の花形役者二人の人生を軸に、日中戦争前後から50年間の激動の中国社会を描いた大作。
公開当時のレスリーは俳優活動がめざましかったけれど、その後突然に亡くなったこともあって、彼自身の運命にも重なるような気がした。
そして第二次文革とも言われる事態が進行する昨今、この映画のようなことがまた起きていそうなのも悲しい。
舞台の上の彼はこの上なく美しく、3時間近くある長さもあまり気にならなかった。

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spicaM

4.0中国の近代史に疎かったけれど

2020年10月25日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

この映画を観て、ネットで色々読んでみた。今だって選べないことの多い人生だけど、沢山の先人のお陰で、幸せな時代に生きてると思う。ただただ舞台に全人生をかけているだけなのに、時代が変わるだけでこんなに翻弄されるなんて。しかし京劇のシーンは美しい。皇なつきさんの漫画を思い出した。

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ねむこ

4.0レスリーチャンにつきる

2020年10月23日
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鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

レスリーチャン、、、。天才か!
彼はもうこの世にいないけど、こうやって作品の中で生きている。
鳥肌ものの演技。
正直、周りが霞むほどに。

香港は今、あの頃とだいぶ様変わりしたけど、今の香港を見てレスリーチャンは何を思うんだろうと考えてしまう。

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Kei

3.0京劇の歴史物語

2020年9月5日
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鑑賞方法:TV地上波

泣ける

悲しい

難しい

昔に観た時は、つまらなかったと思ったけど、いま観るとそうでもなく、中国の思想転換に翻弄されてきた役者達の歴史物語を垣間見た気がします。主人公が子供の頃に稽古場を脱け出して、もう一人の仲間と観た京劇に感銘をうけ、頑張るために戻るところが人生の分かれ目か。京劇が認められる時代になって良かったです。

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ケイト

5.0男として生を受け・・・

2020年9月2日
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鑑賞方法:映画館、VOD

泣ける

悲しい

怖い

見にいってよかった。昨年、映画館で見たのより映像も音もクリアで、昨年も配信でも見た記憶がないシーンがあったのでやっと全部を見ることができたように思う。戦争、内乱、芸術、貧しさ、美、天地のひっくり返しをもたらす革命と権力と思想。蝶衣と菊仙の嫉妬と憎しみと駆け引きの激しさと苦しさをレスリー・チャンとコン・リーが命を輝かせて演じた。何度見ても涙する。(2023.08.04.)

映画館で見ることができるとは夢にも思っていなかった。鏡の使い方が素晴らしいことに気がついた。レスリー・チャンとコン・リーの演技に心打たれた。演劇「M.バタフライ」を見る心の準備もできた。レスリー・チャンの不在が悲しい。(2022.6.3.)

レスリー・チャンの演技があまりに素晴らしくて胸が痛い。子どもの時、少し大きくなって、そして大人になって、きっかけは色々で、涙が一筋(または沢山)こぼれる場面が美しい。それから血。手の指から流れでる血、その血で判を押す、台詞を間違えた小豆を滂沱の涙を流して石頭がわざと折檻する、口から血を流して今度は完璧に演じる小豆、手の平の血で唇を拭う蝶衣、法廷で指で判をおし赤くなった手で唇を拭う。蝶衣にはいつも赤がつきまとう。赤い金魚もそう。蝶衣の部屋の金魚柄の薄布、金魚鉢の中を泳ぐ金魚。全部、蝶衣みたい。金魚は中国だなと思った。でも、文化大革命の赤色は蝶衣の色じゃない。荻原浩の小説『金魚姫』を思い出した。

習慣なんだろうか。背中から長衣をかけてあげるシーンが沢山ある。親愛の情を示す行為なのかな。久しぶりに見て、菊仙の孤独と絶望がわかってきた。蝶衣の母親も菊仙も同じ境遇、自分が京劇の役者になったのも石頭と出会ったのもそもそもは母親ゆえ。運命から人は逃れられないのか。(2020.11.23)

大柄で背の高い石頭の横に立つ小柄な蝶衣。その佇まいが映画の最初と最後におかれている。そのシーンがすべてを語っていた。蝶衣が愛らしくて涙が出る。

蝶衣は男性の装いの時も、足さばき、立ち止まる、振り返る、寄り添う、発声と話し方、笑顔、眼差し、師匠の前にひざまずいた時の足が正座重なりをしているなどすべての身のこなしが(一昔前の)歌舞伎の女形の役者さんと同じ。こんなこと稽古無しに一朝一夕にできる訳がない。衣装と鬘をつけて顔を作って照明を浴びた舞台の上の姿は美しく、嫋々とした、という言葉は蝶衣の為にあるとしか思えない。レスリー、天才だと思う。

あまりに蝶衣に感情移入してしまったので、菊仙憎し!になってしまった。前の方の席に座っておいて芝居が終わらないのに途中で帰る菊仙ダメ!お行儀も悪い!海千山千の菊仙は計算づくの芝居じみた言動をして嘘をつき、何度も石頭を蝶衣を、沢山の人を騙した(コン・リーが上手い役者だからこそ)。でもそんなこと、最初から蝶衣にはお見通しだった。苦界から抜けたい彼女の思いはわかる。けれど母からやむなく捨てられ折檻に耐えながら居場所がそこしかない所で歯を食いしばってきた男の子が、体をはって涙を流して守ってくれた石頭と離れられる訳がない。蝶衣が阿片中毒から立ち直るために苦しんでいた時に抱きしめてくれた菊仙は、でもその時だけは蝶衣の母だったかも知れない。

蝶衣は芯が通っている。法廷で嘘をつかなかった。日本軍は自分の体に指一本触れなかった、青木が生きていれば京劇を必ずや日本に持って行ったはずだと述べた。日本人は京劇の素晴らしさと美しさをわかっていると、歌い踊りなから蝶衣は感じたからだ。それに、大嫌いな菊仙の入れ知恵を諾々と受け入れたら菊仙に借りができる。蝶衣はいつも筋が通っている。

宦官であった爺さんの目にとまってしまった小豆が、布にくるまれて担がれて運ばれる場面。小説で読んだような気がする。若く美しい女性が殿様(?)みたいな人の所に運ばれた時もそんな風だった。そういう運搬方式が中国の習慣だったのかな?
スターになった石頭と蝶衣がスーツ姿で写真館で撮影。その後それぞれが人力車に乗っている場面で、蝶衣には赤い日傘をさしかける人がついていた。乳母日傘!歌舞伎では男も女形も顔は全部自分で作るけれど、京劇では男の隈取りは女形が描いてあげるのか。通常の演出では7歩の所が君は5歩だったねと、京劇の大御所が石頭に言う場面。歌舞伎好きもそういう話をよくする。京劇にはカーテンコールがあるんだ!

中国はこれからどこに行くんだろう?あれだけ芳醇な文化と芸術と歴史をもった国。

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talisman

4.5コン・リーとレスリー・チャン

2020年5月4日
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鑑賞方法:映画館

1994年劇場公開時鑑賞。
当時、コン・リーが好きでその流れで観たのですが、こういう強さと弱さ、したたかさと純粋さを併せ持つ役どころが、ほんとうにピッタリはまっていて、単なる敵役にとどまらない印象深い人物を作り上げていました。
そしてレスリー・チャンの辛く苦しい恋慕がにじみ出る美しく繊細な演技も素晴らしいです。

二人は後年『花の影』でまた違う役どころでチェン・カイコー監督と組んでいるので、比べてみるのも面白いです。

ただこの二人があまりにも素晴らしすぎたために、もう一人の主役であるはずのチャン・フォンイーは、あまり深みを感じられない演技で見劣りしてしまうのが残念です。

文革時の苛烈な粛清や劇中劇『覇王別姫』などを上手にストーリーに組み込んでいるのもポイントです。

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なお

4.5この映画に出会った当時、京劇の煌びやかさにすっかり魅せられ本物の観...

2020年3月20日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

この映画に出会った当時、京劇の煌びやかさにすっかり魅せられ本物の観劇にも出かけたりした。
今観ると、歴史的な背景であったり、京劇という文化がどのようにして時代を経てきたかということなどの違った側面に目を向けることができて、この作品に対する理解がより深まった気がする。
登場人物の心の機微についても以前より気づくことが多かった。政治によって価値観がくるくる変わる世の中に翻弄されながらも、変わらぬ信念と思いを貫こうとする主人公に心打たれたのはもちろんだけど、時代の潮流に押し流されて自分の価値観や誇りを捨てるしかなかった人間の悲哀も胸に迫るものがあった。

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原っぱ

4.0京劇「霸王别姬」と表裏一体の物語、中国近現代史のうねりに翻弄される三人の男女の運命。叙情劇と叙事劇とが見事な合体を見せる映画。

2019年12月23日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、映画館

①2回目の鑑賞で初めての映画館にての鑑賞。映画館で観れたお陰でラスト・シーンの意味がよくわかった。
②一方、前に観た時に印象深かったシーンが2つ無かったぞ?記憶違いか、4K版にする時にカットされたか?(そんなことはないだろう…)お陰でレスリー・チャンが前に観たとき程は美しく見えなかった…
③チャン・フォン・イーは男という生き物を、コン・リーは(いつもの様に)女という生き物を体現している。そしてレスリー・チャンは…蝶衣という人間を体現する。
④この映画は前半と後半とで演出方法が微妙に違う。
前半は群衆劇のよう。子役を主役として前面に出すよりも当時の中国の時代背景と京劇の伝統的な世界とを克明に描き出す。
大人になりコン・リーが登場する後半は、その時々の時代相を点描するのは代わりないが、セットが簡素化し、中心人物三人による舞台劇のような様相を呈するようになる。

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もーさん

3.5かくも怖ろしきかな、中国。 中国少年残酷物語。捨てられ、そして折檻...

2019年7月15日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

かくも怖ろしきかな、中国。
中国少年残酷物語。捨てられ、そして折檻の嵐、果ては男色の餌食。途中登場の中国版山口百恵、こいつも勝気でいかにもです。ラストは…人間不信になりそうです。かの国の強烈さを知るのに最適な一作、衝撃です。
日本人の扱いは相変わらずだが、結構当たってるところも。観劇にて決して暴力はふるわなかったと。当たり前か(笑)
評価は高いようですが、私は正直あまり好きになれませんでした。長い、そして重い。

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はむひろみ
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