「さんざしの砂糖漬け」さらば、わが愛 覇王別姫 カールⅢ世さんの映画レビュー(感想・評価)
さんざしの砂糖漬け
レスリー・チャンの程蝶衣の子役時代の名前は小豆子。遊郭で働くシングルマザーが子供をどうにか引き取ってもらおうとする冒頭のシーン。その子役の子はどう観ても女の子。手の指が一本多くて、母親(ジァン・ウェンリー)に料理包丁で切り落とされるあの子です。あの子のややつり上がった強い眼差しがとてもよかった。石頭が淫売の子といじめられる小豆を庇うシーンになると、すっとした顔の細身の華奢な中性的な男の子になるので、あれっさっきの娘は?ってなってしまいました。コン・リーの演じる菊仙の子供時代だったのかな?としばらく混乱してしまいました。この映画のコン・リーは百恵ちゃんに似た雰囲気でちょっとたまりません。
石頭の機転で脱走してしまうもう一人の子供(小癩)はさんざしの砂糖漬けを頬張れるだけ頬張って首を吊って自殺してしまいます。うんと悲しいです。1920年代の中国の京劇学校は雑技団やサーカスのよう。親が手放した子供やストリートチルドレンを訓練させていたんでしょうね。たくさんのエキストラを使った前半から、芸術的な映像とテンポのいいカットでどんどん引き込まれました。レスリー・チャン死後20年での4Kレストア版を劇場で鑑賞しました。
京劇のセリフを間違え体罰を受けるシーン。尼僧が緑の黒髪を・・・男として生を受け・・・のくだり。女の子なのに男子と偽ってもぐりこんだから、わざと間違えるのかな?と思ったりしました。
ブエノスアイレスが公開された1997年にカミングアウトしたレスリー・チャン。歌手でデビューして、吉川晃司のモニカや百恵ちゃんのさよならの向こう側のカバー曲がヒットしたんですね。折しもジャーニー喜多川問題が国連で取り上げられることになったこともあり、国民党の有力者で京劇界の重鎮(袁)などと幼い時からそっちの関係に引き込まれたことがダブってしまいます。ジャーニーのおかげでまるで日本が○○天国みたいに思われるのは嫌ですね。フォーリーブス(おりも政夫、北公次)のことはは私はかなり衝撃を受けたのですが、当時のマスコミは腫れ物をさわるようにスルーしてしまったような記憶があります。
戦前戦後の内乱から文化大革命を経て50年にわたる程蝶衣と段小楼の生涯を菊仙を交えて描いた作品ですが、単なる三角関係というよりも、アヘンからの離脱に苦しむ蝶衣を母親のように抱擁する菊仙を観ていると、なおさらこの三人の関係は悲し過ぎます。個人的には後半は政権の移り変わりや文化大革命前後の時間経過がとても早いので、前半の部分のほうが好き。