「人も芸術も本来の姿を失う中、彼は本物の姫になった」さらば、わが愛 覇王別姫 未佐緒00さんの映画レビュー(感想・評価)
人も芸術も本来の姿を失う中、彼は本物の姫になった
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出だしから中国の貧困というものを見せつけられ、金のない者、女、子供の生きて行く手段が限られていく中、レスリーチャン演じる小豆子が京劇という芸術に心身、全てを捧げて生きて行く決心をする。
反対に兄の石頭は石頭は現実というものを分かっているのか遊郭にも足を運んで舞台と私生活を割り切っている、二人の姿が対照的です。
女郎と結婚した石頭ですが、そのことで弟と決別してしまい、京劇、舞台からは離れられない。
「俺は役者だ」という男は大人になって別れても弟のことが大事なのはわかる、けれど、それが蝶衣とってどれくらい残酷なことかわかっていないのではと思うのだ。
蝶衣が行き場のない小四を引き取って、かっての師匠と同じように折檻、いや、修行して罵られる姿に似ていると思ったのだが。
でも同じではない、蝶衣には誇りがあった、別姫を演じ、京劇に対する自分に。
世の中が変わり、妻は自殺、一人になった段小楼、そして再び、二人で舞台に立つ日が来る。
でも、昔と同じではない、衰えを感じる小楼とは反対に蝶衣は美しい。
軍に捕まり、酷い目に遭い、アヘンで身を滅ぼしかけても立ち直って再び舞台に。
もしかしたら蝶衣は小楼の衰えを、これ以上、見たくないと思ったのかもしれない。
いや、自分の気持ちが変わっていくことを恐れたのかもしれない。
だから自分だけで逝くことにしたのかもしれない、そこには小楼がいる、現実ではないが、自分の記憶の中の彼が舞台の上で待っている。
彼は本物の姫になったのかもしれない。
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