劇場公開日 2005年3月12日

「谷村美月」カナリア kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0谷村美月

2019年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 援助交際で金を稼ごうとしていた少女ユキと知り合い、二人で関西から東京へと旅に出る。途中で知り合った、レズっぽい2人の女性(りょう、つぐみ)。この2人がとても印象的。ボーっと眺めていた光一と由希の表情も最高だ。前半はロードムービーの基本を踏襲しながら、少年の閉ざされた心と、生きがいを見つけるために行動を起こす少女のやりとり。万引きは盗まれた痛みがやがて自分に振りかかるといった宗教的観念が抜けない光一。しかも夜になると御経を唱えたり、頭に触ると怒り出す習慣が抜け切らない。

 徐々に少年の心が変化していくかと思っていたが、マインドコントロールがどこか拭い落とせない。元信者たちと出会ったときにも、自分という存在を教えられる。親から生まれた子どもではあるが、アイデンティティは自ら作り上げなければならないこと。これには母、祖母と亡くしてしまった由希の方が切実な問題だった。もっと彼女が少年に対して人生を教えるような展開が欲しかったように思う。

 『害虫』のときのようにテンポがいいわけでなく、目の見えないおばあさんが鶴を折るシーンに代表されるようにじっくりと見せる手法が多かった。テーマもいいけど、視点がバラバラなのも気になるところで、実際、由希の心情に共感してしまう箇所が多かったかもしれない。ラストは衝撃的でもあるけど、ロードムービーの結末としてはもうちょっと・・・

kossy