バレット・モンク : 映画評論・批評
2004年1月7日更新
2004年1月17日よりニュー東宝シネマほか全国東宝洋画系にてロードショー
仏教の精神をさりげなく伝える痛快アクション
思慮深くて茶目っ気もある無敵のチベット僧を軽妙に体現したチョウ・ユンファが、じつにチャーミング。仏教(アジア)の精神をさりげなく伝える物語と絶妙に溶け合い、頼れる兄貴のような親しみを覚えてしまう。
闘うときは、縦横無尽に技を繰り出すが、よく見ると、“罪を憎んで人を憎まない”僧は敵を殺してはいない。やむなく銃を手にし、ユンファならではの2丁拳銃を華麗に披露しても、相手の銃をはじくだけ。最後の最後に、その思いを宿敵ストラッカーに語る姿も渋い。
しかし、カンフー映画オタクの白人青年カーには、後継者を見つけた喜びを隠しながら、シャレた言葉で“心”を説き、思わず笑みがこぼれてしまう。風変わりな僧に、戸惑いつつも尊敬の念を抱いていくカーを、ショーン・ウィリアム・スコットが自然体で好演。ふたりが育む新しい師弟関係に憧れてしまう。また、カーが恋するバッドガールのからみも、驚きの隠し技があって興奮させられる。
さらに、煩悩だらけのカーに後継者は務まるのかという不安を意外な方法で払拭したオチも、巧みでさわやか。「なぜ危険な巻物を破棄しないのか?」など、いくつか疑問は残るものの、気持ちよく楽しめる痛快アクション。
(山口直樹)