ブロークン・フラワーズのレビュー・感想・評価
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大人の修学旅行
気の乗らない男ドン =ビル・マーレイ。
ジム・ジャームッシュの撮る男たちは、いつもながら覇気がなくて、それが実に好ましい。
スター俳優ではなくて、巷に、いつもどこにでもいる見慣れた男たちがここでも主演だ。
隣人ウインストンに尻を叩かれて
かつて愛した4人+1人の女を訪ねることに。
エチオピアの弛緩したフュージョン音楽がバックに流れる。これはもう、いやいやながらの道中にピッタリというものだ。
①ローラの巻
レーサーの妻、裸の娘はロリータ。
奇妙な体験だったがベッドも共に出来た。ドンはこれに気を良くして次へ行く・・
②ドーラの巻
不動産業の夫婦、ドンの贈ったパールとフォトグラフは大切に保管されている。今の夫は韻を踏んでロン。
しんみりと、しかし満足の再会。
③カンメンの巻
動物と会話する博士。心を読むのではなく自立して相手と会話をせよと指導される。人間もかくあれと。
花は突き返されて、思惑が外れる初めての再会。
④ペニーの巻
荒くれバイカーたちと暮らす女。打ち捨てられたピンクのタイプライター。
「ごめんなさい」どころか罵られて強烈なパンチを御見舞いされる。
ほうほうの体の再会。
⑤ぺぺの巻
墓を訪ねての再会。愛したぺぺは最近死んだのだ。
死者ならばペニーのようには立ちかかっては来ないだろう。でもここでドンは一番やられている。
傷心で満身創痍の墓参。
・・・・・・・・・・・・
【過去を美化するなかれ】
ピンク♡ピンク♡ピンク♡の 過去の思い出が、5つの旅でセピアでグレーなものに変わる。
ジム・ジャームッシュが6年ぶりに撮ったという本作品だが、この人の本領はやはり「セピアでグレー」だ。
思わぬ「カラーの画面」に観始めて驚いたが、やはり彼のベースはモノクロ。まるで着色写真のように見える色味で、ドンの心象風景を敢えてチープに表出している。
過去をバラ色にしたいコンチキ野郎の心理をBrake ってことだろう。
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【わかっちゃいるけどやめられない】
独居老人は、寂しさゆえにオレオレ詐欺にやられるものだ。
(隣家のウィンストンのように子沢山でわちゃわちゃせずに)ソファーに横たわっている孤独な男ドンは、過去への妄想と他人の体温にすがってしまうから。だから悪魔の囁やきに散華したのだろう。
インターネットを駆使すれば、かつての愛人たちに再会は可能な世の中だ。
グーグル・ストリートビューで僕らも昔の思い出を密かに辿ってみることも、あるのではないか。
「ライオン25年目のただいま」ではインドの生みの母に会いたくてパソコンは大活躍だったが、
本作、ストーカーギリギリの探索が招いた結果は
「やぶ蛇」。
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【そもそもピンクの手紙など来るはずがなかろうが】
“過去に引きずられる男の性”、
“TAURUSではなくPORSCHEで昔の女に会いたい”とか、
・・僕と同性の監督として、痛いとこ、こそばゆいとこ突いてくるし、
男を良く分かってくれているジャームッシュにはニヤリとしてしまう。
一本取られたね。
サンキューJim。いい勉強になりました。
チーズサンドごちそうさま、
一生ついて行きます(笑)
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そう!ホリー・ゴライトリー!ブロークン・フラワーズ冒頭の歌の歌手。
ジム・ジャームッシュの映画で、最初に見た映画。小岩の古本屋さんで中古DVDを買った。3年位前だと思う。初めて見た時、冒頭の音楽に惹かれてしまった。その後『ティファニーで朝食を』を読んで、感動していると、なにか聞き覚えのある名前が頭に閃いた。そう!ホリー・ゴライトリー!ブロークン・フラワーズ冒頭の歌の歌手。そして『ティファニーで朝食を』の主人公。それで、この映画更に好きになった。
当初から、エチオピアのJAZZと言うから、ラスタカラーのレゲエだろうと思って見ていて、それを大きく良い意味で裏切り、レゲエとJAZZの新しいクロスオーバーミュージックと思っている。そう、今でも。
ストーリーも言うまでもない。音楽とストーリーの為に何度も見返した。今日も見たが、ビル・マーレイ演じる主人公の出した答えは?僕は分かったつもりでいる。今日も分かった。
ビル・マーレイがいい
2021年8月8日
映画 #ブロークン・フラワーズ (2005年米)鑑賞
#ジム・ジャームッシュ と言えばロードムービー
旅によって、何か得たかと言われれば、出会いはあっても、答えが難しい
いい歳しても、金があっても、人生に満足できず、悩み続ける
そんなことを感じてしまう映画でした
【ピース/大人へのアイロニー】
僕達の人生が、ジグソーパズルのようなものだとしたら、あちこちに絶対埋められないピースがあるに違いないと思う。
ピース自体がないのだ。
この「ブロークン・フラワーズ」は、気まずくも、可笑しくて、でも、やっぱり気まずく展開するストーリーのなかで、大人なんだけれども、大人になれない大人へのアイロニーを描いている。
しかし、エンディングは、やっぱりちょっと笑っちゃう。
ビル・マーレイは、このドン・ジョンストンみたいな役をやらせたらピカイチだと思うし、4人の元恋人役も、年齢を重ねたとはいえ、やっぱり美人だし、役になりきっていて素晴らしいと思う。
もし、昔の恋人から、今は一人で、実は密かに僕の子供を産み、育てて....と連絡があったら、僕は、どうするだろうか。
家庭のあるなし、裕福か否かを考えても、会いに行く勇気があるだろうか。
この作品には、この視点から、ずっと気まずさが付きまとう。
最初に、シェリーが出て行ってから、ずっとだ。
ウィンストンと、ローラくらいは登場人物として例外のように思うが、それを除くとやっぱり気まずい。
ドンの過去の女性遍歴は、詳細が語られることはないが、どう考えても、あまり褒められたものではないことが伺える。
でも、まあ、確かに、気まずいのだが、僕達は傍観者として、「まあ、しょうがないよね」と他人事として、女性だったら少し憤ったり、男性だったら、自分は大丈夫と高を括ったりしながら、眺めて笑っているのだ。
最期、もしや(父親の)自分に会いに来たのではないかというようなしぐさの若者に、チーズ入りの基本ベジタブルのサンドイッチをおごった時の会話が秀逸だ。
「旅する僕に、サンドイッチをおごって、あと何か哲学的な助言はある?」
「そうだな、過去は終わってしまった。未来といえば、これからどうにでもなる。だから、大事なのは、現在なんだ」
そうだよ!
ドン、それは自分自身に言わなくてはいけない言葉なんだよ!
他の若者にも息子か?と目を向けるドンが最後まで面白い。
そして、僕の最初の問い。
「もし、昔の恋人から、今は一人で、実は密かに僕の子供を産み、育てて....と連絡があったら」、僕はどうするだろうか。
これだという答えは見いだせない。
でも、それが人生なのだ。
大人だから、良い答えが導き出せるとは限らないのだ。
やっぱり、埋められないピースはある。
ないことを知らずに、探し続けるしかないのかもしれない。
皮肉だけど、それはそれで、面白いかもしれない。
ピンクの手紙
「リストを作れ」「いやだ」
「ブランチを食べに来い」「いやだ」
「計画を立てておいたから、後はカードを使って旅に出ろ」「いやだ」
命令されるのが嫌なのか、誘いを受けるのが嫌なのか、とにかく頼まれたら必ず「NO」と答えるドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)。ところが直後のカットでは必ず申し出を受けている彼が映し出されるのです。しかも楽しそう。単なるアマノジャクだったのか?元々オフビート・コメディの才能を発揮するジム・ジャームッシュ監督なのに、主演がビル・マーレイということも相乗効果となって、このような不思議な笑いを与えてくれます。
かつてはドン・ファンだった男もそろそろ枯れ気味の独身中年。同棲していたシェリーが家を飛び出した直後に、「20年前、あなたと別れてから妊娠がわかり、一人で育てた息子も19歳に」「あなたのもとを訪ねるかもしれません」と書かれたピンクの手紙を受け取った。おせっかいで探求心旺盛な隣人ウィンストン(ジェフリー・ライト)にそそのかされるまま、かつての恋人の元を訪ねることになった。ロードムービーとしては、息子が父親探しの旅に出る話はよくあるけど、これは逆をいくストーリー。相手から訪ねてくるのにわざわざそんなことを・・・などとは思ってはいけない。なんたってジャームッシュ作品なのですから。
手紙はピンクの封筒に赤い文字で書かれていて、本文がタイプライターだったことからヒントはピンクとタイプライター。4人の候補者を次々訪問するのですが、単に懐かしかったり、ぎこちなかったりで、独特の“間の悪さ”が絶妙な空気を醸し出します。その空気が「自分に子どもがいた」と不安と希望の入り交ざったドンの微妙な心を描いてくれました。そして、手掛かりのピンクにこだわるがために、バスローブ、ケータイ、名刺、等々に悩まされ、通りすがりの女性たちも夢に出てくる始末。
結局最後にはどうなったの?などと余韻を残す終わり方には賛否両論かもしれないですけど、あれこれ想像できる楽しみもありました。見所はエチオピアン・コーヒーとエチオピア音楽♪嫌いじゃなかったのね・・・
【2006年5月映画館にて】
「心の動き」を見つめさせる演技、ビル・マーレイ
ビル・マーレイのセリフが少ない、だけど彼は圧倒的に演技している、まるでたくさんの長台詞を話してるように。
フランセス・コンロイと少し間の外れた旦那とのテーブル、
カメラはフィックス、
フランセスと旦那はどうにもならない会話で客をもてなす、
ビル・マーレイは話さない、
ただそのちょっとした目の動きでこの時間の気持ちを表す。
ジャームッシュ!
彼こそ!
演技うまい。
女の人に振られたおじさんが、元気無くしてる感じ。
寂しくて、息子さんに会ってみたくなったのだろうけど、まだ所帯を持とうと本気で思えば持てそうなのに、持とうとしないところが彼なんだろうなぁ。
エチオピアの音楽🇪🇹素敵 会話のテンポが小気味よくて楽しい ウィン...
エチオピアの音楽🇪🇹素敵
会話のテンポが小気味よくて楽しい
ウィンストンがドンの性格を分かりきってる感じがいいな〜〜
でも最後あれで終わりなんだ
素晴らしいの一言
ジム・ジャームッシュの作り出す空気感、好きだなぁ。『ストレンジャー』以来の大ファンでっす!
今回も、ふいに差し込まれる何気ないショットが良かったりするんだよなぁ。なんだろうなぁ、うまく言葉にできないけど、好きなんだよなぁ。
人生は 枯れてからこそ 咲くもんさ
主役はヤル気の無い人間を演らせたら世界一の名優ビル・マーレイ。
私は彼の冷めに冷め切ったオーラが大好きだ。
『ゴーストバスターズ』の頃から大ファンで、日本をナメた視点で描いた『ロスト・イン・トランスレーション』は、彼が演らなければ全く成立していない。
今作でも良い意味で“枯れ果てた演技”をしており、正に“ブロークン・フラワー”そのものである。
彼の最大の魅力は、あの眼だ。
ホントに人生を諦めている。
人間関係にウンザリしている人の眼は、相手を見下したり、見放したるのを通り越して虚無になる。
当初は感情を破棄した主人公の眼が、不条理な旅をキッカケに変わっていく。
訪ねる女性達には既にそれぞれ家庭があるから、
「オレの子を産んだかい??」
なんて聴けるワケが無い。
昔噺に花を咲かせながらも、いつ切り出そうかと戸惑っている眼が、いつの間にか輝きを取り戻している。
眼に感情が宿っているのだ。
その過程が物凄くウマく面白い。
気持ちが沈んだ人間に必要なお金や麻薬ではない。
人との出逢いだ。
お金やセックスはそれからでいい。
『バッファロー66』
『スタンドバイミー』
『アバウト・シュミット』
『菊次郎の夏』etc.
ロードムービーにオチが無いのは鉄則に近い。
無論、今作でも最後まで何一つ解決していない。
物足りないと云ってしまえばそれまでだが、全編に渡る気だるい雰囲気は大好きだ。
小気味良いギターサウンドが、なおさら物語をアンニュイにさせる。
人生に、力みなんて必要無いのだ。
ただ最初の訪問先であるシャロン・ストーンの娘が、いきなり“スッポンポン”で現れたのは、眼が点になったが…。
まあ、眠くなりかけた展開に大きな刺激を投下した爆弾スパイスとして、作品に非常に貢献しているのは紛れもない真実である。
では、最後に短歌を一首
『枯れた花 水の代わりは 愛だろ愛 春が来るのは それからだろう』
by全竜
心にいつのまにか残ってる静かなコメディ
優柔不断でだらしないが仕事の成功を収めた独身貴族男。女からはモテモテ。それでも人生どこか物足りない。この役にビル・マーレイを持ってくるなんて、ジャームッシュ監督冴えすぎです。
そんな男が晩年をむかえ、匿名の手紙で自分に子供がいることを知らされ、三千里の旅に(どこかいやそうに)でるわけです。
昔つきあっていた数々の女に会うとはどういう心境なのか?そして手紙の主は誰で子供は本当にいるのか?ビル・マーレイのどこかとぼけた表情と、それを裏返すような行動力のコントラストが、旅をつづけていく主人公の「本当の心」を徐々に浮き上がらせていく。ラストの表情に不覚にも涙しそうになりました。男ってひょっとしたら悲しい生き物なのかもね。
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