劇場公開日 2006年3月4日

「ブロークバックマウンテン」ブロークバック・マウンテン pullusさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ブロークバックマウンテン

2014年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

悲しい

幸せ

3月3日に2014年のアカデミー賞が発表される。それにちなんで、今回は過去のアカデミー受賞作品を遡ってみる。

『ブロークバックマウンテン』は第78回アカデミー賞の監督賞を受賞した作品である。監督は「アン・リー」。彼は去年のアカデミー賞(第85回)でも『ライフ・オブ・パイ』で監督賞を受賞している。

『ブロークバックマウンテン』は鑑賞後、今までの映画には感じたことのない感情がこみ上げてきた。直後には自分の気持ちを整理できなかったものの、これは生涯のベストに入る映画であることを直感した。
殆どの映画は鑑賞の最中に演出が良いとか、詰めが甘いということを気にしてしまうが、『ブロークバックマウンテン』に関しては、自分がこの映画の"何"に魅了されているのか、最後まで理解できなかった。

おそらくそれは、ヒースレジャーの演技であったり、映像の美しさであったり、物語のテンポであったり、時代背景であったりするのだろう。
もちろんストーリーも素晴らしく、「自由」や「愛」について考えさせられる作品であることは間違いない。アメリカは自由の国だと言われているが、実際、あの"ブロークバックマウンテン"にある本当の自由とはかけ離れている。同性愛がばれてしまえば殺されてしまうし、大切な家族や愛する人をひどく傷つけてしまう。そのような時代、一線を越えてしまったイニス(ヒース・レジャー)とジャック(ジェイク・ギレンホール)の二人の感情、そして人生を鮮明に描き出している作品は、まさにアカデミー賞に相応しい。

しかし、それ以上にこの作品の秘めている力は大きい。"ブロークバックマウンテン"に憧れるイニスとジャック同様に、作品としての『ブロークバックマウンテン』に憧れる自分がいる。それは決して言葉にできない感情なのだ。母体回帰を願うような、人間としての本心を揺さぶられるような作品なのだ。

pullus