「後世に残る傑作シリーズの開幕!」ボーン・アイデンティティー かせさんさんの映画レビュー(感想・評価)
後世に残る傑作シリーズの開幕!
マット・デイモン主演、ダグ・リーマン監督のスパイ・アクションの傑作。
【ストーリー】
フランス、マルセイユ沖で操業中の漁船が意識を失い漂流している男を救助する。
男にはついたばかりの銃創があり、自分が誰かすら分からずひどく混乱していたが、船医は男の体から摘出した、何らかの装置を見せる。
操作すると装置は発光し、壁に投影されたのは銀行の口座。
その銀行を訪れようと、男はスイスに入国する。
公園で途方に暮れていた彼を、警官たちが尋問しようとするが、記憶にないマーシャルアーツで瞬く間に警官二人を無力化、奪った銃を素手で易々と分解してしまう。
自分の戦闘能力に慄く男。
自分の働かせる注意力も、強い肉体も、闘う技能も、彼が逸脱した人間であることを示していた。
スイス・チューリッヒの貸金庫には、自分の写真だが全く違う経歴の多数のパスポート、さまざまな国の紙幣、そして高性能自動拳銃があった。
拳銃をそのままに、ひとまず一番新しいパスポートのジェイソン・ボーンを名乗り、祖国であるアメリカ領事館を訪れたが、前日の件でそこは警察に手配されていた。
包囲を受けるボーンだが、身につけた技能でそれを突破、領事館の受付で騒いでいたマリーという女性を雇い、彼女の車でスイスを脱出する。
思いもよらず旅の道連れとなった彼女に、ドライブインで自分の状況を打ち明けるも、無論記憶喪失などと信じてはくれない。
だが、ようやくたどり着いた自宅の住所のパリの高級アパルトマンで、ついにボーンは敵——工作員に襲われる。
汚れ仕事に慣れた手強い敵をどうにか撃退するも、そいつは窓から飛び降りて死んでしまう。
一体自分は何者なのか。
なぜ命を狙われたのか。
ボーンの自己——アイデンティティを探す旅が始まった。
ヒット後、アクション映画を全てボーン風にしてしまった歴史的転換点、道標ともなった作品です。
地味だけど有効な戦闘技術、早いカット割と「全てを説明しない」ことで観客にリアリティを覚えさせる、ドキュメンタリー畑出身のダグ・リーマン監督ならではのシビアなカメラワーク。
ジャッキー・チェン的な優れた演舞技能と秀でた肉体によるアクションを一瞬で古臭いものにした、カメラアングルとカット割に重きを置いた生々しい演出。
「ボーン・アイデンティティ」は、それ以前と以降に明確なちがいが分かるほど、恐るべきポテンシャルをもった一本だったのです。
この作品の登場であの007の脚本が変化したと聞きます。
正義と悪という二元性で描くことが、この作品によって終わったのでしょう。
「私は誰?」
この問いかけが、見るものを夢中にさせます。
10回以上見ました。