処刑人 : 映画評論・批評
2001年2月15日更新
2001年2月17日より渋谷東急3、丸の内シャンゼリゼほかにてロードショー
悪いヤツなら、殺してもいいんです
悪い奴らは皆殺し。ボストンの教会に通う敬虔なカソリックの若者マクナマス兄弟は、ひょんなことからロシアン・マフィアの手先を殺してしまう。しかし日頃の品行方正が認められ、無事正当防衛で釈放される。そこで2人は神の声を聞くのである。悪人どもに神の鉄槌をくだせ! というストーリーからすぐ想像がつくように、「処刑人」は「狼よさらば」的な町のダニ退治ドラマである(ご丁寧に「チャールズ・ブロンソンの映画みたいにやろう」なんてセリフまである)。しかも復讐譚の動機づけがないだけに、下手をすれば不愉快な殺人劇にもなりかねない。
だが、想像もつかないのがそのあとの展開だ。物語は予想もつかない方向に転がり、2人が受けた妄想電波はどんどん強く強力に世界中に広がっていくのである。いちばん強力に電波を受けてしまうのは2人を追うFBIの捜査官を演じるウィレム・デフォー。いきなり登場するや刑事をパシリに走らせ、ホモを見ては「カマ野郎!」と罵倒し、驚くべき推理力で事件の真相を喝破するかと思うと、しまいに自分で事件を再現しながら歌い踊って銃を撃つ! デフォーの恐るべき大変身&大怪演だけでも一見の価値はあり。
(柳下毅一郎)