劇場公開日 2003年3月29日

「ラスト、希望を胸に東京に旅立った桐島に遠藤が贈ったビデオレターに映る鮮やかな空と海の青が実に感動的でしたね。」blue(2001) 矢萩久登さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ラスト、希望を胸に東京に旅立った桐島に遠藤が贈ったビデオレターに映る鮮やかな空と海の青が実に感動的でしたね。

2025年2月2日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

目黒シネマさんにて『~少女たちの至るところ~』(2025年1月30日~2月1日)と題した3日間限定特集上映にて魚喃キリコ氏原作、安藤尋監督作『blue』(2003)と塩田明彦監督作『害虫』(2002)の2本立てを、それぞれ20年ぶりに鑑賞。

『blue』(2003)
女子高演劇部舞台裏の騒動と、それに翻弄される少女たちの揺れる感情とクラスメートへの恋心を描いた中原俊監督『櫻の園』(1990)が好きで本作品にも同じ空気を感じて当時劇場に足を運びましたね。
自身の将来に憧れと不安を感じる高校生三年生の桐島カヤ子(演:市川実日子氏)が都会の音楽や書籍に詳しい訳ありの留年生・遠藤雅美(演:小西真奈美氏)に惹かれつつ、次第に自我に目覚めていく話。
劇中、激しい感情の吐露や大きな事件はありませんが、長回しでゆったりと静かに二人の心の機微を描いているところが実に良いです。

市川実日子氏の遠藤に対するほのかな想いや愛情表現、桐島の想い受けつつも過去の恋愛に執着する小西真奈美氏と両氏の演技はもちろんですが眼差しや所作が美しく、大器の片鱗を垣間見せていましたね。

もう一つの主役は空と海。
ビビッドな青空と海原ではなく、少しモヤがかかった日本海側の独特の鉛色の空と海が少女たちの不安定な心象風景を見事に表現していましたね。
ラスト、希望を胸に東京に旅立った桐島に遠藤が贈ったビデオレターに映る鮮やかな空と海の青が実に感動的でしたね。

矢萩久登