劇場公開日 2006年10月14日

「傑作小説の見事な失敗作」ブラック・ダリア arakazuさんの映画レビュー(感想・評価)

1.5傑作小説の見事な失敗作

2013年11月2日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

難しい

J・エルロイの出世作にして、暗黒のL.A.四部作の一作目のブライアン・デ・パルマによる映像化作品は確か公開当時、新聞の一面広告打つなどかなりお金のかかった宣伝が行われたはず。
しかし、どうも劇場に観に行こうという気にならなかったのは、キャスティングが自分の持っていたイメージとだいぶかけ離れていたからなのだが、その悪い予感は残念ながら当たってしまったようだ。

J・エルロイの原作小説はキャスティング以前にかなり情報量が多くて、2時間程度の映画の尺におさめる脚本を書くのは至難の技なのだが、よくもこうまで薄っぺらな話に出来たなと逆に感心するくらいに脚本が酷い。
原作を読んでいない観客にとって登場人物の行動は唐突にしか感じられないだろうし、これでは誰に対しても感情移入など出来る筈もない。
そして、やはりミスキャストとしか言えないキャスティング。特に女優陣。
S・ヨハンソンはこの役には若すぎるし、H・スワンクの何処に奔放な女のイメージがあるのだろうか?
致命的なのは、へっぽこな脚本のせいか監督の演出力のせいなのか、役者が揃いも揃って皆大根にしか見えないことだ。
原作の読者にしてみれば、『L.A.コンフィデンシャル』にも物足りなさはあったのだが、今作を観ると、皮肉にも、あれが如何に優れた作品だったのか、今更ながら感じることが出来る。

arakazu