イン・ザ・ベッドルーム : 映画評論・批評
2002年7月15日更新
2002年8月3日よりシャンテ・シネほかにてロードショー
実は演出の深い企みが味わえるサスペンス
「イン・ザ・ベッドルーム」はサスペンス映画。物語の鍵は3という数字だ。とブチ上げる根拠は、映画が始って間もなく、エビ漁に出かけたマット(トム・ウィルキンソン)が言うセリフ。「エビの仕掛けは小さいから、2匹まではOKだけど、3匹入っちゃうと争いになって、足や鋏がもげちゃうんだよ」だ。
正直言って、最初に見た時はこのセリフに重要な意味が隠されているなんて、気づきもしなかった。ところが気にし始めると、あるわあるわ。この映画には3=3人=三角形が引き起こす確執や争いや悲劇がたくさん閉じこめられている。
マットと妻のルース、息子のフランクの、インテリでリベラルで穏やかなオリジナルの三角形。そのオリジナルが、息子の恋人ナタリーが加わることで、ルース、フランク、ナタリーのトゲを隠した三角や、マット、フランク、ナタリーのセクシュアルな三角に変化していくのだ。それを意識しながら見ていると、三角の変化を暗示する意味深なシーンがたくさんあるし、変化を重ねるごとに、マットとルースの本音が顕になっていく。
その過程が実にサスペンス。今では珍しくなった演出の深い企みが楽しめる。オヤジが息子の仇を討つ話だなんて、単純に考えちゃいけないよ。
(森山京子)