「検索エンジン“クルーク”」アキハバラ@DEEP kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
検索エンジン“クルーク”
インド人のジャンク屋から買ったパソコンが「GELL」「FUJITYU」「SOMY」。極め付きにMacのOSがWindowsだったというのも大笑い。アキハバラだなんてタイトルをつけるものだから相当にオタクな内容かと思っていたら、かなり面白い映画となっていました。ただし、PCやインターネットについて若干の知識が必要かと思います。
ベンチャー企業を立ち上げた5人の若者たちが尊敬するのはデジタル・キャピタル社のCEOでIT業界のカリスマ的存在の中込(佐々木蔵之介)だ。風貌は全く違うが設定はまさしくホリエモン。企業買収によって莫大な利益を得ていて、傲慢な経営、マスコミでの生意気な発言、9割が契約社員という事実等々、間近で見れば嫌悪感をもよおすほどの存在だ。社内でも虐げられている契約社員たちは黒覆面でデモを起こしていたり“7ちゃんねる”で連絡を取っていましたが、会社がそれら反対勢力を抹殺すべく秘密組織も抱えているところなんて、あの殺人(?)事件さえも想像してしまいました。
せっかくのベンチャー企業を創設したのだから儲けることは当たり前なので、5人それぞれの能力を生かしたサイトを立ち上げる。「お帰りなさいませ、ご主人様」という挨拶のメイドカフェでバイトするアキラ(山田優)はデジキャピの息のかかった地下格闘場でも活躍中。その彼女をメインキャラとしたのですが、中込はその彼らの才能を買って公告の契約をして仕事にはずみがついた。しかし、その後に開発した検索エンジンでの契約を拒んだことから、デジキャピが非合法に奪ってしまうのです・・・警察もアテにならず、裁判を起こしても負けてしまう。知的所有権の問題や警察批判、社会派的な内容をも盛り込んで、ディスクを奪還しようとするストーリー。
終盤、デジキャピ社に乗り込んでいくのはまるでRPGのような雰囲気。IDカード、暗号解読などといった『ミッション・インポッシブル』的な内容になるのかと想像していたのですが、彼らはあくまでも素人集団。不恰好でも「ネットは無料コンテンツが大切」といった信念に基づき、それぞれの力を出し切るところが感動的でした。
特筆すべきキャラは萩原聖人。バンダナに長髪と口ひげ、ファッションもそうだし、雰囲気が『パイレーツ・オブ・カリビアン』のスパロウ船長そのものでした。また、中込の腕の立つ秘書が寺島しのぶであり、劇中映画の『緋牡丹博徒』は藤純子が主演しているというお遊び要素(もちろん母娘)もありました。そして、憎まれ役の刑事には田口トモロヲ。寺島しのぶも元警察だったというから、彼と関係があったのかもしれません。さらに重要な伏線に“ハゲ”があります。この伏線とともにラストにはスカーーっとさせてくれました。