劇場公開日 2007年1月13日

愛の流刑地 : 映画評論・批評

2007年1月16日更新

2007年1月13日より日劇2ほか全国東宝系にてロードショー

原作以上に「文学」を感じさせる演出

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TVドラマ界で長年活躍してきた演出家・鶴橋康夫(67歳)の映画監督デビュー作品。冒頭からいきなり、朝やけの風景を主人公の性交っぷりにオーバーラップさせ、風景と情事の融合を試みるような描写がつづく。世間の営みから浮きあがったような感極まったセリフの数々もそのような描写のなかに練り込まれて、さりげなく収まっている。

そんなシーンの合い間に鶴橋監督は、思いっきり俯瞰で主人公の中年男子(豊川悦司)の全身をとらえ、「男」という存在の滑稽さを露わにしてみせる。一方、相手の女性(寺島しのぶ)に対しては、情事をはずみにして徐々にオンナとして開いていく、そのたたずまいの変化をみごとに映し出している。

渡辺淳一先生みずから「映像化された自分の作品のなかで一番満足している」と太鼓判を押すだけあって、甘さを全開にしたやりとりや先生こだわりの婦女子アイテムである「白スリップ」をしっかり登場させるなど、原作ファンへの目配せも忘れていない。ドラマ界では「社会派」と呼ばれることの多い鶴橋監督が渡辺作品の官能シーンにどう挑んだのか、失礼ながら多少ツッコミを入れるつもりで試写にのぞんだのだが、これがなかなか原作以上に「文学」を感じさせる演出だった。

小泉すみれ

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