七人の弔(とむらい) : 映画評論・批評
2005年8月9日更新
2005年8月13日よりテアトル新宿ほかにてロードショー
乾いた笑いで現代人への警鐘を鳴らす
自分の子供を虐待していた上に、金目当てに臓器売買業者に売る。この衝撃的な内容を生理的に受け付けることが出来ない人がいるようで、試写後の評価がまっぷたつ割れている。だが、子供を虐待どころか過失致死に至らしてる大人たちのニュースが新聞紙上を賑わせ、映画よりも遙かに現実の方が超えてしまっている昨今。論議を醸し出すくらいの刺激的な内容じゃないと、すさんだ世の中に麻痺してしまっている現代人の心には、虐げられている人たちの悲痛な声は届かないのかもしれない。
ダンカンが脚本を手掛けた前作「生きない」同様、社会を、人間を、シニカルに見つめた脚本が冴える。大金を目の前にし、己の欲望と傲慢さを、滑稽なまでにさらけ出す大人たち。それとは対照的に、大人たちの策略を知らず、キャンプというつかの間の憩いに無邪気にはしゃぐ子供たち。冷たくされても、虐げられても、すがるように親の愛を求めてくる子供たちの姿を見て、いとおしさを感じない人はいないだろう。
乾いた笑いを放ちながら、現代人への警鐘を鳴らす本作品。似たような感動映画を量産している今の日本映画界において、ダンカンのような社会を鋭く斬る映画作家は貴重な存在だ。
(中山治美)