劇場公開日 1975年11月29日

「ハイテンポな中に挟み込まれる秀逸なラブシーン」コンドル(1975) 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 ハイテンポな中に挟み込まれる秀逸なラブシーン

2025年9月21日
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鑑賞方法:VOD

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興奮

知的

先日89歳でこの世を去ったロバート・レッドフォード。同じ時代を共有した自分は本レビューその他でレッドフォードの出演作について書いてきたが、盟友、シドニー・ポラックと組んだ数えて4作目になる本作『コンドル』は、地味だがテンポは早いし、映像は美しいし、CIA内部の陰謀に巻き込まれる主人公、ターナーを主軸に個人vs組織の闘いを描いた点には先見性があって、未見の方は是非この機会に観ていただきたい。

テンポについては息つく間もない。CIAの秘密事務所がある朝襲撃され、たまたま朝食を買いに外に出ていたターナーが血だらけになって床に横たわる仕事仲間を発見し、その後、次々と襲いかかる危機をギリギリで回避して、飛び込んだ洋服店にいたキャシーを拉致し、彼女のアパートに身を隠すまでを一気呵成に見せていく。各所でそのギリギリ感を保証する編集(編集者のフレドリック・スタインカンプはポラック組の一人)が見事なのだ。ポラックの演出は写真を背景に使ったターナーとキャシーのラブシーンで一層光り輝く。この物語、ラブロマンスなど挟み込む余地はないはずなのに、演じるレッドフォードとフェイ・ダナウェイの巧さが嘘くささをカバーしていく。

ロバート・レッドフォードとはつくづく、映画のマジックをリアルに変えてしまう美しさと説得力を持った俳優だったと思う。俳優レッドフォードを語る上で、『明日に向って撃て!』と『スティング』は外せないが、『追憶』(同じくポラック監督作)と『コンドル』はハリウッド映画が今よりバラエティに富んでいた1970年代と俳優レッドフォードを追想するのに欠かせない作品だ。

清藤秀人
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